原発を動かさないことで起きる大きな問題のひとつが、二酸化炭素(CO2)に代表される温室効果ガスの増加だ。電力会社は火力発電所を動かして電力需要に応えようとするが、化石燃料を燃やす分CO2増加は避けられない。
京都議定書では、CO2の排出量を90年比で6%減らすことを国際社会に約束してもいる。火力の増強は、国際的な約束を反故にすることにはならないのか。
火力発電で温室効果ガスが年間3.9%増えた
環境省が2012年12月に発表した11年度の温室効果ガス排出量(速報値)によると、10年度から11年度にかけて、約5,100万トン(3.9%)温室効果ガスが増加している。環境省では、要因は「火力発電の増加」にあるとみている。さらに、電気事業連合会のまとめによれば、12年度も火力発電が増加傾向で、さらに温室効果ガスは増えるとみられる。
日本が参加している京都議定書の「第1約束期間」(2008~2012年度)では、日本は90年比で6%削減することを義務づけられている。京都議定書では、森林がCO2を吸収した分を自国の削減分として上乗せできる。これに加えて、排出権取引の一種である「京都メカニズムクレジット」を考慮すると、08年~11年度の4年間の削減幅は平均9.2%。このことから、環境省は目標について「達成可能ではないかと考えております」としており、国際公約を破らずにすみそうだ。
日本は13年度以降の「第2約束期間」には参加していないが、国連気候変動枠組条約(UNFCCC)下で2010年に結ばれたカンクン合意に基づき、2020年度までの削減目標を設定することにしている。
ただし、この削減目標については、岸田文雄外相が13年2月28日に行った外交演説で、
「(13年11月に開催される)国連気候変動枠組条約第19回締約国会議(COP19)までに温暖化ガス25%削減目標をゼロベースで見直す」
と明言。原発事故前に民主党が掲げていた政策を完全に覆すことになる。