「行けたら行け」サインで自滅 策におぼれた侍ジャパン、球史に残るボーンヘッド

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   WBC日本代表は2013年3月17日(サンフランシスコ時間)、準決勝でプエルトリコに1-3で敗れ3連覇を逃した。大きな敗因の1つに奇策の失敗があった。

一死一、二塁でダブルスチール「行けたら行け」

   だれもがあ然としたプレーだった。3点を追う日本は8回一死後、鳥谷(阪神)が三塁打。続く井端(中日)が本前の巧打で右前に安打を放ち、1点を返した。さらに内川(ソフトバンク)も右中間にしぶとく落とした。

   一、二塁と好機を広げ、打者は4番の阿部(巨人)。ボルテージは最高潮に達した。阿部 は初球を空振りしたが、スイングは思い切って振ったもので、勝負どころのすごみを見せた。

   ハプニングは2球目に起きた。内角高めを見送ると、一塁走者の内川が二塁へ向かって走った。二塁走者の井端は二塁ベースにいるのに、だ。捕手はボールを持ったまま内川を挟みタッチアウト。二死二塁から阿部は二ゴロに倒れた。この不可解な出来事で敗戦は決まった。

   「ダブルスチールに行けたら行けというサインだった。井端はスタートのタイミングが合わずに戻った」と山本監督は説明した。内川は「期待してくれたファンの思いをすべて終わらせてしまった……」と声を震わせた。

台湾戦、土壇場での盗塁に味をしめた?

   この場面は4番打者にすべてをまかせるところである。おそらく多くの野球人はそう考えているだろう。阿部の打撃に信用がおけない、という理由なら分からないでもないのだが……。

   行けたら行け、とのサインはリスクが大きい。今回の場合、井端は無理と判断し、内川は走った。1つのサインで2人の走者が正反対のプレーをしたことが墓穴を掘った結果となった。相手の捕手は大リーグナンバー1の強肩で知られるモリーナということを忘れたのだろうか。

   なぜ奇策を用いたのか。台湾戦で1点を追う9回二死から一塁走者の鳥谷が二盗。井端が同点打を放ち、延長で勝ったことがあったと思う。そのときも鳥谷に「行けたら行け」と指示している。この成功例が同じ劣勢の場面を攻勢に転じようとしたのかもしれない。

   日本がそういう戦いで勝ち上がってきたことは相手も知っている。データを利用するのは日本だけではない。プエルトリコが最も嫌がるのは阿部に自由に打たせてくることである。それなのにアウトの可能性が出る盗塁を走者に求めた日本は「策におぼれた」としかいいようがないし、奇策というより愚策といえるかもしれない。

   「選手はよくやった」と山本監督は言い、テレビのスポーツニュースでも健闘をたたえた。しかし、米国に次ぐ野球大国の日本がそれで終わらせてはならない。あのプレーは球史に残るボーンヘッドなのだから。

(敬称略 スポーツジャーナリスト・菅谷 齊)

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