「原発回帰」安倍政権 再稼働の行方(6)
核燃料サイクルは問題だらけ 再処理コスト「19兆円」で収まらない

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「全量再処理」諦めれば19兆円のうち7割を削減可能

   東京電力福島第1原発の事故を受けて、内閣府原子力委員会では核燃料サイクルのあり方を議論してきた。2012年6月11日付の原子力発電・核燃料サイクル技術等検討小委員会資料を見ると、興味深い試算が載っている。

   ここでは、核燃料サイクル推進のうえで大前提とされてきた使用済み核燃料の全量再処理と、再処理せず直接処分した場合、それぞれ併存させた場合の3パターンについての費用が計算された。2030年における電力の総需要における原子力比率を0%、15%、20%、35%と仮定して推計したところ、いずれも直接処分のコストが最も低かったのだ。最も原子力比率が高い35%でも、全量再処理が18兆4100億円なのに対して、直接処分は14兆8100億円だ。

   澤井氏は「直接処分すれば安くなるのは当然」で、今すぐ核燃料サイクルを諦めれば負担を最小限に抑えられると主張する。既に完成している施設の建設費や、これまで発生した使用済み核燃料の処分場の設置費用は避けられないが、再処理工場の運転、MOX燃料加工工場、TRU廃棄物(超ウラン元素を含む廃棄物)のコストが不要となり、19兆円のうち7割を削減できるというのだ。

   費用を度外視して核燃料サイクルを推し進めたとしても、六ヶ所再処理工場で「生産」するプルトニウムが本当に必要なのか。高速増殖炉「もんじゅ」は操業再開のメドが立たず、プルサーマルによりMOX燃料を原発で用いようにも、福島第1の事故を経た今、国民感情としてプルトニウムを使った発電を許すだろうかと澤井氏は疑問を呈する。

   本格稼働させれば費用が「右肩上がり」で膨らみ、生みだされるのは使い道に困るプルトニウム――。それでも国が「全量再処理」の方針を今も捨てていないのは、「『核のゴミ』の貯蔵プールとしての役割が欲しいからではないか」と澤井氏は指摘する。青森県は、もし再処理が中止となれば使用済み核燃料を六ヶ所村から各原発に送り返すとしている。安易に退却できないのが本音ではないかというのだ。

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