安倍晋三首相は2013年3月15日夕方会見し、環太平洋経済連携協定(TPP)への交渉参加を正式に表明した。
政府の試算では「我が国全体の経済には全体としてプラスの効果が見込まれている」と述べ、「今がラストチャンス」と主張した。
「経済には全体としてプラスの効果」
政府の試算では、消費や工業製品の輸出の拡大で国内総生産(GDP)が実質で3.2兆円増える一方、農林水産業の生産額が3兆円落ち込む。ただし、この試算については、
「これは、『関税をすべて即時撤廃し、国内対策は前提としない』という、きわめて単純化された仮定での計算によるもの。実際には、今後の交渉によって、我が国のセンシティブ項目への特別なハードルなど、あらゆる努力により、あらゆる悪影響を最小限にとどめるのは当然のこと」
と、試算よりも影響が限定的になるとした。
また、大きな影響が懸念されている農業については、農業従事者の高齢化や耕作放棄地が増加していることなどを挙げ、
「今の農業の姿は、残念ながら若い人たちの心を引きつけているとは言えない」
「これらは、TPPに参加していない今でも、目の前で起きている現実。若者たちが将来に夢を持てるような強くて豊かな農村を取り戻さなければならない」
と述べ、高付加価値の農産物の輸出拡大を進めるべきだと主張。「TPPはピンチはなく、大きなチャンス」と述べた。
「この機会逃すとルール作りから取り残される」
TPP交渉には、これまでに米国、カナダ、メキシコ、ペルー、チリ、ニュージーランド、オーストラリア、シンガポール、ブルネイ、マレーシア、ベトナムの11か国が参加している。
すでに参加している国が決めたルールを覆すことができない、という指摘については、
「十分承知の上。関税等については、いままでほとんど議論されていない。これから決めることもたくさんある」
と反論した。
「今がラストチャンス。この機会を逃すということはすなわち、日本が世界のルール作りから取り残されることになることにほかならない」
とも述べた。