高橋洋一の自民党ウォッチ 
所得移転進めば「矛先」収まる TPP「交渉参加」を勧める理由

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不利益受ける人への「移転」

   実はこうした計算はTPP前の状態とTPPを実施して輸入量が増え国内生産者が減少するという調整を経た後の状態を比較する、経済学で比較静学といわれるものだ。だから、10年間累積の数字は、こうした計算を行うプロから見てあり得ない話だ。

   筆者なりにメリットとデメリットを考えると、それぞれ6兆円と3兆円で、その差額が3兆円になる。しかもこれは、それぞれ10年後と今とを比較した数字だ。それが10年後からズーと続く。もちろん初めの10年間では事情が違うが、一定の仮定をおけば累積で15兆円。その後の10年間では累積で30兆円。その後の10年間も累積で30兆円、TPPを実施しなかったときに比べてGDPが増える。

   この3兆円というのは主に関税関係だけだ。非関税措置は定量化が難しいが、理論的にはメリットとデメリットのネット差額は3兆円より大きくなる。

   TPPで不利益を受ける人は必ずいる。そうした人に損をさせないように最大3兆円の所得移転をしても、国全体では3兆円のメリットがあるというのが、自由貿易なのだ。もちろん最大3兆円の所得移転をどうスムーズに進めるかは政治、国の仕事である。不利益者や一部政治家は交渉参加に反対しているが、そのうち所得移転で矛先を収めていくだろう。

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