東京大学が推薦入試を導入するとの報道が出て、インターネット上で議論が起こっている。
「東大生」は学力選抜により一定の質が担保されていたのに、推薦入試ではそれが失われてしまうと懸念する人が大方だが、少数ながら「大胆な試行で評価したい」と歓迎する人もいる。
OB「内申書とかコネとかじゃなくガチンコ勝負で門をくぐるのが東大生のプライド」
報道をまとめると3年~5年後をめどに、二次試験の後期日程の筆記試験を廃止し、新たに内申書や調査書、面接を重視して合否を判定する推薦入試を導入するという。ただ、学力を担保するため、大学入試センター試験は一次選抜としてこれまでどおり実施するそうだ。
東大が筆記試験なしの入試を実施するのは、戦時下をのぞいてはじめて。
点数至上主義脱却の狙いがあり、後期への導入は布石で、前期試験への拡大も視野に入れていると伝えているところもある。
報道について、東大の広報は「発表したものではなく、正確な情報とは言えない段階。ただ、推薦入試導入について検討を進めていることは事実で、なんらかの決定があり次第発表する」と話した。「すでに聞いていた話とも力点の置かれ方がやや違う」と本田由紀東大教授(教育学)もツイッターで違和感を示している。
ただ、このニュースで、ネットに衝撃が走ったことは事実だ。OBなど関係者らを中心に持論をぶつ人が多く、ツイッターでは一時「推薦入試導入」がトレンド入りを果たした。
大方は批判的なもので、伊東乾東大准教授(情報学環・学際情報学府)は、ツイッターでこう懸念を示す。
「天下の愚策と思う。毛色の変わった事を10年そこらやって、結局廃止になるだろう。というより廃止する側の先頭に自分がいる可能性もあると思う。点数『のため』の勉強は論外だが、点も取れなくなったら東大の品質保証は何がするのか?大学院なら大賛成だが学部は亡国の挙。私が東大入試の『推薦枠』に大いに疑問を持つのは、東大の二次試験が本当に良問で、また採点が殺人的に大変な細かい記述式を長年採用して、しっかりよい人材を取ることに毎年関係者が大変な精進をしている事実を念頭にそう思うのだ。つまるところ推薦は自分の入試の価値基準の自己否定のようなもの」
また、「内申書とかコネとかじゃなくガチンコ勝負で門をくぐるのが東大生のプライドのはず…」と嘆いてみせるOBもいる。
「東大生の強みって、筆記試験以外何があるの?」
このほか、「進学実績稼ごうと学校側が内申書いくらでも誤魔化してくるから無意味な気がする」「東大生の強みって、筆記試験以外何があるの?筆記試験に強い人材が欲しいというニーズもあるわけだしね。。。」「筆記試験の何がいいって、たとえ高校中退でも、ひきこもりでも、勉強して結果を出せば東大に受かることができる、というのがすばらしいわけで」「入試が点数至上主義で、なぜあかんの?入試みたいなゲームもできない奴に何かできるとは思えない。この入試も裏口で入りやすくなるだけ」「大学入試ってスポーツでいう基礎トレみたいなもんだから、あんまり点数をないがしろにするのも正直どうかと」などと反論が相次いでいる。
一方で、賛意を示す声も少数ながらある。東大出身の片山虎之助参議院議員は「浜田学長の『タフな東大生を』という考えの一環でしょうが、私は大賛成です。ただし、推薦の方法は大方の納得の行くものにしなければなりません」とエールを送る。また、「大胆な試行で評価したい。批判もあるようだが、やってみてダメなら元に戻せばいい」という人も、いないわけではない。