まもなく、3月11日です。この日に向かって歩いています。多くの犠牲者を出した東日本大震災! この日から大きく私たちの生き方が変わりました。和尚としてなにをすべきか! そんなことを考え始めたのはいつからだろうか? 2011年6月のある日、朝早くちょうど6時ころ仙台からご夫婦が訪れました。「朝のお勤めに参列させてください。」と朝早く仙台をたってきたといいます。私はその時に一日中訪れる様々なご用件のお客様の応対に追われまたボランティアの方々が生活していたので長く休んでいただこうとまだ朝のお勤めをしておりませんでした。そのためお線香をあげるだけでお帰りになりました。子供さんが陸前高田市で行方不明の方でした。このご夫婦はきっと藁をも掴む気持ちで普門寺を訪れたのです。なぜあの時私はすぐにお経をあげれなかったのか! その後ずっと後悔の念が絶えませんでした。
大震災から4ヶ月の7月11日岩手県曹洞宗青年会で午後に大震災殉難者供養法要が普門寺で修行されたことがきっかけとなり、自分の中に供養を続けていける思いができました。翌7月12日朝課(朝の勤行)でやっと東日本大震災殉難者諸精霊位を供養するためのお経を読むことができました。その日から身元不明のご遺骨そして行方不明の方々に香を手向ける毎日が始まりました。成仏を願い遺族に少しでも心の安らぎが訪れることを念じて毎日毎日読経を続けております。新聞の取材に「大切な人が寒い海の中で苦しんでいるのではないかと。そう心を痛める人には海の話をします。荒れた時期もありましたが、今は穏やかです。母なる海で安らかに眠られています。安心してほしい。その一心で語り掛け、手を合わせます。」と答えることができました。いまだに217名の行方不明者がおられます。14名の身元不明のご遺骨を普門寺の墓地の一角に陸前高田市が埋葬し慰霊碑を建立しました。大本山永平寺の福山諦法大禅師猊下が福島宮城と巡拝され3月7日午前9時40分普門寺にご到着されました。本堂で大震災の犠牲者に香を手向け合掌され被害に遭われた方々にねぎらいのお言葉をいただきました。私はこの日をずっとまっていました。ありがたくて嬉しくてこれで間違いなく皆成仏されると! 3月11日は東日本大震災殉難物故者の霊法要を11時から修行いたします。内陸から若い和尚様のお手伝いをいただき厳粛に法要を営みます。平成25年3月11日3回忌この日が出発!
(熊谷光洋)
熊谷光洋(くまがい こうよう)
岩手県陸前高田市にある曹洞宗普門寺の30世住職。
2011年4月から陸前高田市の身元不明の遺骨を受け入れ始める。境内には東日本大震災鎮魂地蔵堂があり、2012年4月に長野の善光寺が被災松を使用して制作した親子地蔵4体のうち3体が安置されている。大人地蔵1体は今も善光寺に安置されている。
■普門寺ホームページ http://fumonji.e-tera.jp/