政府が原発の再稼働を判断する際に不可欠なのが、立地自治体の同意だ。原子力規制委員会は新安全基準の策定を進めており、すでに骨子(案)が公表されている。新基準は2013年7月にも施行される見通しだが、東京電力柏崎刈羽原子力発電所が立地する新潟県柏崎市と刈羽村は、新基準をどのように評価しているのか。
両自治体が、再稼働に対する考え方を書面でJ-CASTニュースに寄せた。
柏崎市は活断層の評価対象が広がったことを歓迎
最初に、骨子(案)への評価や、再稼働に同意するためには新安全基準を満たす以外にどのような条件があるかについて聞いた。
柏崎市は、骨子(案)について、「関係地方自治体、国民や地元住民に説明し理解を得ることが重要」だとした上で、活断層の評価対象が従来の「13万~12万年前(後期更新世)以降」から「40万年前(中期更新世)以降」にまで大幅に拡大される見通しになっていることについては、
「改めてより厳格化が求められており、その内容は、科学的にも高い信憑性が求められる必要がある」
と歓迎している。柏崎市は書面の中で、国民や地元住民に安全性について説明するように繰り返し求めており、再稼働については
「安全確保に関する議論は、現在、進行中で、再稼働を議論する状況にないと考えています」
と比較的否定的だ。
「最終判断で前面に立とうとしない政府の姿勢に『とんでもない話』」
反面、刈羽村は、
「福島事故の教訓や新たな知見を踏まえて、更なる安全対策、安全確保を進化させることが重要。国の規制当局の判断が『安全に運転できる』という判断をすれば再稼働できない理由はない。再稼働について、それ以外の条件はない」
と、積極姿勢に見える。
政府(経済産業省)と規制委の枠割分担についても聞いた。12年秋には、両者が「地元との合意形成はしない」と、再稼働にあたって立地自治体に理解を求める役割を押し付け合い、柏崎市の会田洋市長が「とんでもないと思う」と不満を表明した経緯があるからだ。
柏崎市は、
「再稼働の最終判断で前面に立とうとしない政府の姿勢に『とんでもない話だ』というふうに思った」
と経緯を説明している。12年12月には政権交代を迎えたが、
「具体的に何が変わったということになっていません」
とし、事態は進展していないと受け止めているようだ。
一方の刈羽村は、
「政策は時代の条件で変化する。条件変化に対応できる能力とスピード感が重要。(政府、規制委、東電)三者の役割は、明解である」
と、特に問題視していないようだ。
刈羽村「村長は民意の代表である。責任を持って対処する」
13年1月23日には、新潟県議会で再稼働の是非を問う県民投票条例案が否決されている。両自治体とも、条例案が否決されたことに対する評価は避けたが、再稼働にあたって地元住民の民意を問うべきかどうかについては意見が分かれた。
柏崎市は、市長が従来から
「安全確保と地域の産業・雇用を守ることの両方を見据えながら今後適切に判断をしていく必要がある。市民と相談しながら間違いのない判断を」
と主張していることを指摘。市民の意見を聞くことは重要視しているものの、民意を問う方法については、
「今のところ具体的な考えは持ち合わせていない」
とするにとどまった。刈羽村は
「村長は民意の代表である。責任を持って対処する」
とシンプルな回答だった。
柏崎市の会田市長と刈羽村の品田宏夫村長は、12年11月18日に行われた選挙で、それぞれ3選、4選を果たしたばかり。会田氏は再稼働には慎重姿勢を掲げ、脱原発を主張する市民団体からも支持された。品田氏は当初から「原発との共生」をスローガンに、規制委が安全性を認めれば再稼働すべきだとの立場を鮮明にしていた。
両自治体が再開を認めないと、原発の稼働はできない。現状では結果として「凍結状態」が継続している。