東日本大震災で生じた大量の「がれき」をめぐり、国が多額の「無駄遣い」をしたと批判が集まっている。がれき処理を理由にした交付金を、実際には処理を行わなかった自治体・団体などにも「復興予算」として出したというのだ。
交付総額は176億円。一方で担当する環境省は、「反対運動が過熱し、受け入れ先が見つからなかった当時の状況を考えればやむを得なかった」と釈明する。
がれき処理「検討」だけで堺市に86億円
堺市のケースを見てみよう。堺市は12年1月、ゴミ処理施設の建設費などに当てるため、「循環型社会形成推進交付金」40億円の給付を申請した。ところが国は、堺市の事業は同交付金中の「復旧・復興枠」に当たると判断、市の要望を倍以上も上回る86億円を交付すると回答してきた。
復旧・復興枠の対象となるのは、「被災地の自治体が実施する事業」そして「震災がれき受け入れを行う処理施設の整備事業」の2つだ。堺市はもちろん後者に当たる。
とはいえ堺市では、がれきの受け入れについては「市の一存で決められることでもなく、市民の安全・安心を優先する立場として、どこまで積極的に検討していたかとは……」(堺市)というレベルだった。その上、6月には処理方針の見直しなどもあり、堺市にがれきを持ち込むという話自体が流れてしまった。
にもかかわらず交付は決定、満額の86億円が堺市に転がり込んだ。いわば「検討しただけ」で46億円が勝手に上積みされた形だ。
なぜこうなったのか。実はこの「復旧・復興枠」では、実際に受け入れを行うかどうかは判断基準とされていない。環境省が2012年3月に各自治体に配布した文書では、対象はあくまで受け入れの「可能性」がある施設で、
「なお、受入条件の検討や被災地とのマッチングを実施したものの、結果として災害廃棄物を受け入れることができなかった場合であっても、交付金の返還が生じるものではありません」
ともはっきり明記されている。そのため、「検討しただけ」「手を挙げただけ」の自治体にも、「復興予算」が交付されたわけだ。同様のケースは堺市含め全国の7市町3団体で発生しており、その交付総額は176億円に及ぶ。
反対運動も激しく「とにかく手を挙げてもらわなければ…」
しかし環境省の担当者は、あくまでこの出費は必要なものだったと強調する。
「確かに今でこそ広域処理への協力も広がっているが、この枠が設けられた12年春当時は一部市民の反対運動も激しく、受け入れを表明した自治体には脅迫めいた電話がかかってきたぐらい。当時の状況を思えば、受け入れ可能な環境を作るため、こうした『飴』をちらつかせてでもとにかく『手を挙げてもらう』ことが最優先だったんです」
なお今から「返せ」と言い出せば、すでに交付金を受け取ることを想定して予算を組んでいる自治体側に支障が生じること、また「あくまで使い道は、交付金の本来の趣旨であるゴミ処理施設の整備ですので」といった理由から、返還請求などは行わない予定だ。
担当者は「無駄遣い」との批判に対して、終始どうにも納得しかねるという様子だった。
「見通しが甘かった、との批判は甘んじて受けますし、もちろん現状から見れば皆さんそう思うでしょうが、あのときはそれほどしなくてはならない状況で……」