「介入できる時間はきわめて限られている」
自営業者の自殺のそもそもの要因は、事業不振や負債、連帯保証を伴う負債であることが多い、と中央大学総合政策学部の崎坂香屋子特任准教授が白書の中で指摘する。そして、それらが起きてから自殺までの期間の短さを見ると、「(自殺防止のために)介入できる時間はきわめて限られているといわざるを得ない」。
ところが「みずから起業した自営業者」の場合、亡くなる前に専門機関に相談していた人の割合も、63.4%と学生の57.8%についで低い。「負債を抱えながら、追い詰められた気配を周囲に悟らせないようにしていたかのような特徴が見出される」
さらに「自殺のサインがあったと思うか」との問いに、遺族全体の58%は「あったと思う」と回答しているが、このうちの83%は、当時はそれが自殺の兆候だとは気付いていなかったという結果もある。
一方で、自殺者全体のうちどこかに何らかの相談に行った人は、結果的には死に至ったものの、死亡までの平均日数が、そうでない人よりも長いことも調査結果からわかっている。
3月は例年、月別自殺者のもっとも多い月だ。政府は「自殺対策強化月間」と定め、各地方自治体は広報活動とともに相談窓口の設置などに務める。たとえば、自営業者の自殺のもっとも多い大阪府では3月いっぱい、24時間対応の電話相談を実施、「ひとりで悩まないで」と呼びかけている。