宗教団体の勧誘の対象年齢が低下し、中高生が巻き込まれる事態になっている。カフェで勉強をしている生徒を狙い、大学生の信者が正体を隠して近付くケースが増えているというのだ。
専門家は「早期発見が重要」と指摘し、子どもの生活スタイルの変化に注視するよう話している。
大学から締め出され、中高生をターゲットに
「それまでは数年に1件程度だった、(中高生の)保護者からの相談が、2年前、1か月に1件以上のペースで来るようになった」――全国カルト対策大学ネットワークや日本脱カルト協会などで、カルト被害防止の啓発活動をおこなってきた恵泉女学園大学の川島堅二学長(宗教学)はJ-CASTニュースに対してこう話した。
放課後カフェなどで一人で勉強している受験生が狙われるケースが多い。正体を隠した大学生の信者が、「大学生」という立場を利用して声をかけ、宗教団体の催すスポーツイベントなどに誘い出すのだという。
背景には、全国カルト対策大学ネットワークらの活動により、大学側での防止策が強化されたことがあると考えられる。啓発授業の設置や学園祭からの締め出しなどで、大学生を対象とした勧誘活動がやりにくくなったため、「戦略を変えてきたなと思いました」(川島氏)。
東京はじめ首都圏を中心に、札幌、大阪、北九州など、全国の都市部でも被害が確認されているそうだ。これまでにもマスコミなどでよく取り上げられている3団体を含めた、計6団体による被害が多いという。
1年超えると抜け出すの難しく「早期発見が重要」
川島氏によると、子どもがこういった団体に誘われた兆候としては、「生活スタイルが変わること」がある。カルト勧誘は、具体的には以下のような段階をおって子どもの生活に食い込んでいくからだ。
まず、カフェなどで一人で勉強している高校生に、正体を隠した大学生の信者が「勉強がんばっているね」「●●大学の学生だ」などと声をかけ、警戒心を解いてから「勉強も大切だけれど週1度くらいは身体を動かしたほうがいい」などと近くの公民館などでおこなわれる団体の週末イベントに誘う。「バレーボールなどをする」「大学生の友達ができる」といったもっともらしい体裁があるため、たいていの親はこの時点では応援こそすれ警戒することはあまりない。
次に、「人生に役立つ話が聞けるから」と平日の夜に行われる勉強会(実際は教義を教え込む会)に誘われる。当初は週1回だが、少しずつ回数が増える。信者は共同生活をしている場合も多く、そこで夕食も提供される。当然帰宅が遅くなる日が増え、目ざとい親ならこの時点で子どもの変化に気づく場合もある。
こうした勧誘活動は3月~4月におこなわれ、最終的には5月の連休中の「合宿」に引き込むことが目標となっている。
そのため、しまいには子どもは「泊りがけのキャンプに行く」などと言い出すようになる。費用は「無料」という。この段階で親が「さすがにおかしい」と気付いて、相談にやってくることが多いそうだ。
また、稀なケースではあるが、信者の教師がその立場を利用して生徒を信仰に引き込むということもあったという。もちろん、このほかにも様々な手口がある。
川島氏は「最初の勧誘から3か月以内ならほぼ100パーセント離脱させられるが、1年を超えてしまうと、団体の教えが深く浸透し、親に本当のことを言わなくなる。専門家に相談へ連れて行こうにも、団体側の指示を仰いで拒否するので手を打つのが難しい。早期発見が重要です」と警鐘を鳴らしている。