ガソリンエンジン車とハイブリッドカー(HV)の燃費競争が激化している。スズキは軽自動車「アルト エコ」の燃費を改善し、ガソリン1リットル当たり(JC08モード)33.0キロを達成し、2013年3月4日に発売した。従来モデルの30.2キロもガソリン車トップの燃費だったが、一気に9.3%も燃費を改善。HVの代名詞といえるトヨタプリウスの32.6キロを上回った。
アルトエコを超えるのは、同じくトヨタのHV、アクア(35.4キロ)だけ。軽自動車ながら、ガソリンエンジンの改良でHVを凌駕する低燃費を実現したスズキの技術力には目を見張るものがある。
トヨタのHVとスズキが競い合う
現在のHVやガソリン車を合わせた低燃費車のランキングは、(1)トヨタアクア35.4キロ(2)スズキアルトエコ33.0キロ(3)トヨタプリウス32.6キロ(4)ダイハツミライース30.0キロ(5)ダイハツムーヴ、スズキスペーシア29.0キロ(6)三菱ミラージュ27.2キロ(7)ホンダN-ONE27.0キロ――などとなっている。
このうち、アクアとプリウスがHV、アルトエコ、ミライース、ムーヴ、スペーシア、N-ONEが軽で、ガソリンエンジンの小型車はミラージュだけとなっている。HVはホンダや日産自動車にもあるが、リッター27キロを上回り、30キロ前後の低燃費を実現しているのはこれらの車種で、頂点をトヨタのHVとスズキの軽が競い合っているのがわかる。
アルトエコが従来モデルの30.2キロから一気に33.0キロを達成した理由は何か。
スズキによると、(1)減速時のエネルギーで発電し、発電に使うガソリンを減らす減速エネルギー回生機構(2)ブレーキを踏んで時速13キロ以下になると自動でエンジンが停止する新アイドリングストップシステム(3)部品の徹底した見直しによる20キロの軽量化(2WD車で730キロから710キロ)(4)エンジンの摩擦抵抗の低減、CVT(無段変速機)の変速制御の最適化(5)リヤバンパーの形状変更などによる空気抵抗の低減、新開発タイヤによる転がり抵抗の低減――など多岐にわたる。
地道な改良を積み重ねる
自動車メーカー関係者によると、燃費の改善は「画期的なブレイクスルーがない限り、従来の技術を改良し、地道に積み上げていくしかない」という。今回のアルトエコはフルモデルチェンジではなく、これまでのボディーやエンジンの改良にとどまっており、まさに地道な改良の組み合わせでリッター33.0キロを達成したと言える。「軽自動車で20キロの軽量化というのは並大抵の努力では達成できない」という。スズキは従来モデルでも標準モデルに比べ20キロの軽量化を実現しているからだ。
スズキはさらに新型軽自動車「スペーシア」を3月15日から発売する。こちらは先ほどのランキングで5位となったモデルで、アルトエコと同じ技術を採用し、リッター29.0キロを実現した。こちらはダイハツタントやホンダN-BOXに対抗するハイトワゴンタイプでクラストップを誇る。
HV並みの低燃費を実現したガソリンエンジン車は、ダイハツ工業が2010年9月に発売したミライースのリッター30.0キロが先鞭をつけた。その直後の同年12月にはスズキがリッター30.2キロと、0.2キロ上回るアルトエコを発売し、リッター30キロがガソリンエンジン車の頂点となっていた。今回、スズキがさらに記録を伸ばしたことで、ライバルのダイハツの反撃が注目される。