韓国・サムスン電子との資本提携を決めたシャープについて、信用力は上がるが、米アップルとの関係がどうなるのかという声も出ている。
サムスンとの提携は、NHKなどが2013年3月5日夜に最終調整段階と報じた。
台湾メーカーからの出資契約はどうなる
新聞各紙も6日朝刊で大きく報じ、シャープはこの日夕になって、取締役会で提携を決めたと発表した。
それによると、サムスンから3月中に約104億円の出資を受け、3%の出資比率にする。サムスンは、第5位の大株主になる見通しだ。これによって、経営再建中のシャープが自己資本を増強できる。また、大型テレビ向けなどの液晶パネルを安定的に供給できるようになるとしている。
ただ、シャープは今秋までに2000億円もの社債償還が迫っており、これだけでは足りない。台湾のメーカー「鴻海(ホンハイ)精密工業」から約670億円の出資を受ける契約については、株価低迷などから交渉がとん挫していると報じられ、3月26日の期限も間近だ。鴻海は、打倒サムスンを掲げており、今回の提携による影響も懸念されている。
さらに、シャープは、アップルのiPhoneなどにも液晶パネルを供給しており、サムスンと訴訟合戦になっているアップルがどう出るか。
シャープの広報室では、鴻海との交渉について、取材にこう明かす。
「とん挫したわけではなく、引き続き交渉しており、出資実現に向けて努力しています。今回の提携については、直接的な関係はなく別の話と考えており、鴻海側にも話して理解をいただいております」
「サムスンと股裂きになると考えていない」
アップルとの関係については、シャープ広報室では、サムスンと股裂き状態になるとは考えていないとした。
たとえ出資・供給面での不安がクリアされたとしても、シャープやアップルの技術情報などがサムスン側に流出する恐れはないのか。
この点について、広報室では、こう説明した。
「サムスン側とは、あくまで資本提携やパネル供給であって、技術契約ではありません。共同開発も技術供与もないです。また、経営への関与は一切ないと合意しており、役員派遣もありません。ですから、技術情報などの流出はないと考えています」
国際金融アナリストの小田切尚登さんは、シャープの提携についてこうみる。
「サムソンという強い企業にお墨付きをもらい、信用力が上がって、将来性にはプラスになった面はあります。資金調達の呼び水にもなるかもしれません。シャープは、大きな会社ですので、サムソン、アップル両社と関係をもつことはありえます。優れた製品を使いたいのが普通でしょうから、提携したからといって、手を引くとは限らないと思います」
しかし、今後はサムスン1人勝ちの状態が進んで、日本のほかのメーカーにも影響が出てくる恐れはあると言う。