診療可能な病院を検索するシステムは全国にあるが…
実はウェブサイトで診療可能な病院を調べる「救急医療システム」は、全国的に存在している。一般に利用可能だが、ほとんどは、救急搬送時に患者を受け入れる態勢にあるかをリアルタイムで見られる仕組みは整っていない、と円城寺氏。佐賀県のシステムも「救急車で隊員が電話をかけまくる姿や、ある病院で他の病院の搬送状況を全くつかめていない様子を知った」ことが改良のきっかけになったと話す。
「99さがネット」では、搬送情報の更新は救急隊員が行う。患者を病院に搬送し終えた時刻を、iPadを使って入力しておくのだ。ほかの隊員は最新の更新情報をもとに、患者が運ばれて間もない病院を避けて別を当たればよい。医療機関にとっても、各病院の救急患者の受け入れ人数が可視化されれば、相互の連携が取りやすくなる利点がある。
新システムが稼働してから半年で、救急病院までの到着時間が1分短縮されたという。時間にすれば短いかもしれないが、命の行方を左右する状況のなかでの1分はとても貴重だ。佐賀県を皮切りに、岐阜県や奈良県、栃木県、群馬県などで緊急医療情報とiPadを組み合わせた試みが始まっている。
救急搬送の円滑化は改善が進みつつある。だが円城寺氏は「これはあくまで対処療法にすぎません」。病院や専門医の減少が、緊急を要する患者の受け入れを難しくしている現状は変わっていないからだ。