「悪童」として知られた米バスケットボールNBAの元スター選手、デニス・ロッドマン氏が北朝鮮の金正恩第一書記と会談し、帰国後に出演したテレビ番組で正恩氏からオバマ大統領に託されたメッセージを明かした。
米政府はロッドマン氏の訪朝を冷ややかに受け止める反面、駐韓大使経験者からは正恩氏のメッセージを「もっと真剣に受け止めるべき」と、「バスケットボール外交」に期待する声も出ている。
ロッドマン氏は正恩氏を「非常に謙虚」と評価
ロッドマン氏はドキュメンタリー映画の撮影を目的に2月26日から3月1日まで訪朝。2月28日には正恩氏の隣でバスケットボールの試合を観戦し、翌3月1日の「労働新聞」1面トップには、笑顔で観戦する2人の様子が掲載された。正恩氏が第1書記就任後に米国人と会ったことが公表されたのは、これが初めてだ。
ロッドマン氏は帰国後の3月3日(米国東部時間)、米ABCテレビの番組に出演し、訪朝の様子を明かした。ロッドマン氏によると、正恩氏は
「オバマ大統領に一つだけお願いしたい。それは『電話がほしい』ということだ」
「戦争はしたくない」
などと話したといい、ロッドマン氏は正恩氏の人柄を
「一つ気づいたのが、彼は非常に謙虚だということ。人間としてはとても強いが、戦争を望んでいるわけではないと思う」
と高く評価した。
国務省は「意味がない」とバッサリ
だが、米政府はきわめて冷淡な反応だ。翌3月4日の会見では、ホワイトハウスのカーニー報道官が
「我々は北朝鮮と(外交ルートとして)直接の対話のチャンネルを持っている。エリートを楽しませるためにスポーツイベントを開くお金があるのならば、飢えたり、投獄されたり、人権を否定されている自国民の生活に使うべきだ」
と北朝鮮を批判し、国務省のベントレル報道部長も
「きわめて率直に言うと、この北朝鮮の言葉や『離れ業』には意味がない。重要なのは彼らが行う行動だ」
と切り捨てた。
これに異論を唱えたのが、元駐韓米大使のドナルド・グレッグ氏だ。グレッグ氏は米中央情報局(CIA)に30年以上にわたって勤務。アジア地域を担当した。1989年から93年にかけて駐韓米大使を務めている。韓国の聯合ニュースが3月5日に報じたところによると、グレッグ氏は、ロッドマン氏のことを
「クレージーだが、最高の、頭の切れるアスリート」
だと評価。韓国と米国は「これ(金正恩氏のメッセージ)を真剣に受け止めるべきだ」
具体的には、正恩氏が伝えてきた「電話がほしい」というメッセージを
「我々と接触したいという非常に強いシグナル」
というメッセージに解釈すべきだという。その上で、
「状況は非常に流動的で、北朝鮮が『悪魔化』に陥るのを避ける必要がある」
と警告。米朝対話を促進させるべきだと主張した。