「私が彼自身を死に追いやった」―――桜宮高校でバスケットボール部の主将が体罰を苦にして自殺した問題をめぐり、体罰をおこなった当時の顧問・小村基元教諭(47)=懲戒免職=が、はじめてメディアの取材に応じ、実名で顔を出して謝罪した。
これに対してインターネット上では、同情狙いという突き放した見方がある一方で、公の場で謝罪をしたことに一定の評価をする人もいて、賛否両論となっている。
「手をあげることでいろいろなことが変わると思っていた」
小村元教諭へのインタビューは、2013年3月4日、NHKニュースウォッチ9の冒頭で放映された。きっちりとスーツを着込んだ元教諭は、取材現場に入るなり深々と一礼。続けて、
「私が、部活動を指導してきた中で、教え子が自ら命を絶ったことに対して、心からお詫びをいたします」
と謝罪する様子が流された。元教諭は視線を正面に据え、一言一言を確認するように話していた。
体罰について、19年前の赴任当時からおこなっており、その背景を「素行の悪い生徒が部員で何人かおりました。最初は説明していたが、手をあげることで落ち着くということもありました」と説明した。赴任から10年目で部はインターハイ出場、その後も全国大会でベスト8に上り詰めるなど実績を重ねた。そうした中で「自分の指導法は生徒や保護者にうまく伝わっていると思っていました」。
2年前に大阪市に「子どもが体罰を怖がっている」との匿名の通報が入り校長に呼び出されたが、体罰はないと報告したことも認めた。
自殺した生徒は「なぜ、僕だけがあんなにシバき回されないといけないのですか」の思いを手紙につづっている。この理由について、「チームを強化するのにどうすればいいのか考えたところ、彼がレベルアップすることがチームのレベルアップにつながると、その時そのように考えました」と説明し、1週間後にはじめて手紙を見た時のことを「私が彼自身を死に追いやった。本当に何も気づかない、家族の悲しみがきちんと自分がわかっていない愚かさに気がついた」と振り返った。
「体罰という指導理念が間違っていた?」との質問には少し間をおいて「はい」。
「手をあげることでいろいろなことが変わると思っていたが、そうではなく、そういうことを本当に嫌がって、気持ちが傷ついていることがわかりました」
そして、最後に今回インタビューに応じた理由をこう説明した。
「私が言う資格はありませんが、このようなことが二度と起こってはいけないと思い、出させていただきました」
「よくテレビなんかに出る気になるな」「カメラの前で切腹するべきだった」
このインタビューに対して、ツイッターや2ちゃんねるなどのインターネット上では視聴者からの賛否両論が出ている。
「体罰の小村基教諭は、まったく悪びれていない。19年間体罰をやっていた、それで強くした、いままでみんな俺を支持していたじゃないか、そう思っているようですね。顔や態度に表れていますね」「テレビに出てお涙頂戴してるよりも、もっと遺族と向き合ってこいよ?何を全国放送で『こんな俺、可哀想でしょ?』ってやってるの?反吐が出るわ」「よくテレビなんかに出る気になるな。それどころかまだ生きていられるんだな」「小村はカメラの前で切腹するべきだった」「刑事責任を追求しろ」といった辛らつな書き込みが相次いだ。
一方で、「罪は罪とし、今後は専門家と協力して何故体罰が生じるのか、体罰が生じる環境の改善にどう取り組めば良いのか、に貢献してほしいと思います。貴方の熱意が正しい方向へ生かされ排除されない事を願っています」「謝罪でなく大切なのは今後の行動だろうね。ただ番組に出演して謝罪した事は簡単な事じゃない。だから俺は上から目線だけど彼の今後を叩く事無く見守りたいと思う」などと、公の場に出て謝罪をしたことに一定の評価をする向きもある。
また、「2年前に校長のところに苦情が来ていたという。小村氏の属人的な問題に矮小化すべきではなく、管理責任も無視できない」「この男の場合、生徒が自殺し表沙汰になったが同様の体罰や言葉での暴力を罪悪感なしに行っている教師は全国に多数居るだろう。この件で自己を省みてくれると良いが」「心の底から反省して自分を卑下してやっとまともに裁かれるスタートラインだわな(本当はどうかしらんが)大津のあの逃げ回ってる教師よりはマシだな」と、体罰問題を小村元教諭だけに責任を帰して終りにするのではなく、教育現場全体が反省するべきであるとの見方を示す人も多数いた。
体罰自殺事件をめぐっては、生徒の遺族が2013年1月23日、自殺前日の12年12月22日の体罰について元教諭を暴行容疑で刑事告訴、大阪府警に受理された。市教育委員会は13年2月13日、元教諭を懲戒免職処分にしたと発表。元教諭の実名を公表するかについては各社で意見が分かれており、これまで匿名で報じてきた毎日新聞は3月5日、「本人が実名で取材に応じたことなどを考慮して実名に切り替えます」と「おことわり」で説明した。