「最初の容疑では処分保留」に驚き 遠隔操作事件、証拠収集が進んでいない? 

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   遠隔操作ウイルス事件で再逮捕された片山祐輔容疑者(30)が、最初の容疑では処分保留で起訴されず、ネット上で驚きが広がっている。警察や検察は、有罪に足る証拠を得られていないのか。

   警視庁などは2013年3月3日、誤認逮捕した事件について、初めて強制捜査に乗り出した。

検察「一層の慎重な捜査が必要と考えた」

落合弁護士もツイート
落合弁護士もツイート

   ハイジャック防止法違反などの疑いで片山祐輔容疑者を再逮捕したのがそれだ。この事件では、日本航空に爆破予告メールを送ったりするなどしたとしている。

   その証拠は何なのか、はっきりしない部分が多い。ただ、米FBIの捜査で、片山容疑者の会社のパソコンからウイルスの痕跡が見つかったなどと報じられている。

   一方で、東京地検はこの日、愛知県の会社のパソコンから殺人予告があった事件では、片山容疑者を処分保留とした。報道によると、その理由については、「一連の事件の特殊性に鑑み、なお一層の慎重な捜査が必要と考えた」と説明している。

   江の島の猫にマイクロSDカードを付けた首輪を着けたかについては、その場面の防犯カメラ映像があるかは分かっていない。NHKなどの報道では、片山容疑者がバイクで江の島に行ったときが首輪を着けた時間と同じなどの状況証拠が上がっているだけだ。

   弁護人を務める佐藤博史弁護士は、こうした観点から、片山容疑者のえん罪を確信している様子だ。処分保留を受けて、記者団に「現時点では起訴できる証拠はない、ということ。検察は正しい判断に一歩近づいた」と明かした。

   このタイミングに合わせたかのように、ネット上では、「真犯人」を名乗る書き込みがあり、波紋を呼んでいる。

大澤孝征弁護士「まとめて起訴するはず」

   片山祐輔容疑者が使っていたと報じられた匿名化ソフト「Tor」をうたう掲示板スレッドで2013年3月3日、片山容疑者が誤認逮捕の5人目となる狙い通りだと告白したのだ。スレ上でその信憑性に疑問が上がると、証拠をアップロードしたという書き込みがあった。

   ただ、そのファイルは「釣り」だったとの報告もある。犯人になりすました便乗犯の疑いが指摘されており、真相は不明だ。

   「真犯人」のメールを受け取っていた落合洋司弁護士は4日、またメールが来たかどうかをツイッター上で聞かれ、「まったく来てないです」と答えている。

   一方で、片山容疑者の処分保留については、「今のところ決め手の証拠には欠けるから」ではないかとの見方を示した。3日のブログでは、その理由を詳しく説明している。

   それによると、別件で再逮捕して双方の証拠を総合して起訴に持ち込むことは時々あるとしながらも、遠隔操作事件では、複数の事件の証拠関係はかなり重複しており、再逮捕しても新たなものが出てくる可能性は低い。落合弁護士は、こうしたことから、「証拠収集が遅々として進んでいない、ということにはなる」とし、既存の証拠をいかに評価して起訴に踏み切れるかが、今後の焦点になると言っている。

   検事出身の大澤孝征弁護士は、取材に対し、処分保留のまま捜査を続けることはおかしなことではないとして、こう解説する。

「起訴してから再逮捕するのが普通と考えるかもしれません。しかし、この事件は、誤認逮捕した経緯があり、容疑者本人が否認して取り調べにも応じていません。ですから、検察も恥の上塗りになってはいけないと慎重になっているわけです。状況証拠で起訴するには不十分であり、FBIの捜査情報など、ほかの証拠を見極めたうえで、総合的な判断からまとめて起訴しようと考えているはずですよ」
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