会場に入るとすぐ右の壁面に、「3・11 きれいな雨になあれ この作品で針がとまる」と書き添えられた小品が掛けられてある(=写真)。和田美津代さん(内郷)が仲間2人と平・エリコーナで開いている<夢布(ゆふ)の仲間「キルトの世界」>展の一品だ。
案内のはがきに真情がつづられている。八十路に入る前に立ち止まり、振り返ってみたいと思ったこと。いわきに移住して48年、たくさんの出会いと経験が自分の成長をもたらしたこと。3・11以来、針を持てずにいること。
しかし「今回私なりに歩んできたキルトの作品を展示することによって新たな制作意欲が湧き、人生の第3ラウンドのスタートができればと願っております」。
同じ針仕事にちりめん細工がある。富岡町でふくろうのストラップを作り、配っては喜ばれていたおばあさんがいる。原発事故でいわきに避難した。借り上げ住宅に住む。そこでも針を持つ日々。
ストラップがいわきでも評判になった。ざっと1年前、私もおばあさんからストラップをもらった。今もケータイに付けている。ストラップに喜ぶ顔を見るのが、おばあさんの張り合いになっている。
3・11の影響は人それぞれだ。震災から間もなく2年。和田さんにも自分を叱咤する気持ちが芽生えてきた、ということだろう。
和田流キルトは自在な発想が特徴。キルトによる絵画作品といった雰囲気を醸す。同展は3月5日まで。
(タカじい)
タカじい
「出身は阿武隈高地、入身はいわき市」と思い定めているジャーナリスト。 ケツメイシの「ドライブ」と焼酎の「田苑」を愛し、江戸時代後期の俳諧研究と地ネギ(三春ネギ)のルーツ調べが趣味の団塊男です。週末には夏井川渓谷で家庭菜園と山菜・キノコ採りを楽しんでいます。
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