中国艦による海上自衛隊護衛艦への射撃管制用レーダー照射事件では、いまだに中国当局はその事実を認めておらず、逆に日本側を批判すらしてみせている。日本側は証拠データを中国側に突きつけるか検討しているが、仮にそれを突きつけたとしても、中国側が非を認めるかは不透明だ。
なぜならば、中国外務省には、日本側を批判した後に事件の原因が中国側にあることが明らかになっても、「ダンマリ」を決め込んだ「前科」があるからだ。
「憶測に基づく判断は事件捜査のためにならない」
中国が「逆切れ」した事例で記憶に新しいのが、冷凍毒ギョーザ事件だ。
07年12月から08年1月にかけて河北省の天洋食品=閉鎖=で製造され、日本に輸入された冷凍ギョーザを食べた人が相次いで下痢や嘔吐などの中毒症状を訴え、一時意識不明の重体になった女の子も出た。ギョーザからは有機リン系殺虫剤が検出されたが、混入した経緯の解明に時間がかかった。
日本の警察庁は
「日本国内で混入した可能性は低い」
との見解を示す一方、中国の公安省は
「中国で混入した可能性は低い」
と、日中の主張は平行線をたどった。中国外務省も、最終的な分析結果が出ていないことを理由に、
「憶測に基づく判断は事件捜査のためにならない」
「枝葉末節や一面しか見ていない」
などと日本側を批判した。
08年8月には中国外務省は国内で捜査が行われていることを認めたが、中国メディアは、ほぼこれを黙殺。日本メディアを引用する形で、
「日本が再び『毒ギョーザ』をあおっている」(環球時報)
と対日批判を強めていた。
「日本の見解は完全にねつ造、でっち上げ」
結局、事件は10年3月になって、天洋食品の職員が容疑者として逮捕され、一応の解決を見た。
ところが、日本の外務省の発表によると、中国外務省が日本側に逮捕を知らせてきた時には、
「中国の警察部門が2年余り、弛まず、辛抱強く、きめ細かく調査を続けてきた結果としてこの事件が真相解明できた。これは容易なことではなく、また、日本の被害者への慰問となり、日中関係の健全な発展にも寄与する」
と自画自賛するばかりで、これまでの対日批判発言に対する遺憾の意は示されなかった。
今回のレーダー照射事件でも中国外務省の対応は似ているようだ。
「日本が危機をあおり、緊張を作り出している。中国のイメージをおとしめようとしている」(2月7日定例会見)
「日本の見解は完全にねつ造、でっち上げ」(2月8日定例会見)
と、照射されたのは位置を把握するための「監視用のレーダー」であって、「射撃管制用レーダー」ではないと主張している。
日本側は具体的な証拠の開示を検討しているほか、米国も、日本側からの情報提供をもとに「射撃管制用レーダーの照射は、実際にあった」と判断している。さらに新たな事実が明らかになった後の、中国側の対応が注目されるところだ。