WHO「リスクは過小評価するよりも、過大評価した方がよい」
第5章には、福島県内外の調査地点における一般住民の発がんリスクが一覧表となって掲載されていた。1歳の乳児、10歳の子ども、20歳の成人と3つの区分で、それぞれ男女について数値が記してある。
国内で、1歳女児が生涯で甲状腺がんにかかるリスク値は0.77%。これを上回る「追加リスク」が発生する場所で最も値が高かったのは、福島県浪江町となっている。1歳の女児では0.524%アップするというのだ。同様に、白血病は0.027%、乳がん0.357%、大腸がんのような「固形がん」は1.113%が「追加リスク」となっている。飯館村も、1歳女児の甲状腺がんリスクが0.317%増と2番目に高い数値が出されていた。
結果だけを見れば「発がんリスク増」となるだろうが、第4章で説明された評価にあたっての「前提条件」が非現実的だとの批判は少なくない。原発事故後、避難命令をはねのけて現地に住み続け、放射能で汚染された食料をずっと口にしていた住民がいるとは考えられない。乳児であれば、なおさらだろう。この点はWHO側も認めているが、会見では「リスクは過小評価するよりも、過大評価した方がよいと考えた」と弁解している。
だが、国際機関から「発がんリスクが高まる」と名前を出された自治体はたまらない。飯館村の菅野典雄村長は2月28日放送の「ニュースウォッチ9」(NHK)の中で、WHOと報告書に関して「まったく仮定の話で、特定地域の名前を挙げて言うのはいかがなものか。われわれの大変な思いを逆なでするような発表」と不快感をあらわにした。