群馬県内の浄水場の水から、下痢や腹痛などの原因となる原虫「ジアルジア」が検出され、住民が半ばパニックに陥っている。煮沸すればひとまず安全で、命にかかわるような症状も出ないというが、県庁では大量の電話が鳴り続けてパンク状態に。Q&Aサイトなどにも、「料理は大丈夫?」「お風呂は?」などと不安の声が多数投稿されている。
事の発端は2013年2月26日、群馬県庁が、榛東村の県央第一水道浄水場の水道水からジアルジアが検出されたと発表したことだ。
下痢や腹痛の原因となるジアルジア検出
ジアルジア(ランブル鞭毛虫)はほ乳動物の小腸に広く寄生する原虫で、体長はおよそ0.010~15ミリメートルほどに過ぎない。しかし人間が感染すると6~15日ほどの潜伏期間を経て、下痢や腹痛などの症状が2~4週間にわたって続く「ジアルジア症」を引き起こすことがある。
国内では戦後の混乱期こそ蔓延していたが、衛生環境の改善により減少、近年ではまれな病気だ。一方で発展途上国などでは今も比較的多く見られ、旅行先で感染する例は少なくない。
群馬県庁水道課によれば、前述のように多くの哺乳動物に寄生していることもあって、その糞便を通じて河川の水などに紛れ込んでいることは、そう珍しくないという。通常なら浄水場での処理で完全に取り除かれるが、今回は原因不明ながら、給水前の水道水から20リットル当たり1個のジアルジアが検出された。
県央第一水道浄水場では、前橋市・高崎市・吉岡町・榛東村の4自治体に対し水を供給している。県庁ではただちに厚労省に報告するとともに、市民に対して告知を行った。特にジアルジアは熱に弱いことから必ず飲用の際には1分以上煮沸するよう求め、「生水」の状態で水道水を飲まないよう注意を呼びかけた。
再検査では検出なし、当面は生水でもOK
県庁所在地である前橋市など、群馬県の中心部が対象となっただけに、反響は大きく、県庁には住民からは問い合わせの電話が殺到した。水道課の担当者に尋ねたところ、
「10人ほどの水道課総出で電話の対応に当たりましたが、1人当たり100件はかかってきたかと思います」
とその対応だけでも大わらわだったようで、その声にも心なしか疲れが滲んでいた。
ネット上でも混乱が広がった。Q&Aサイト「Yahoo!知恵袋」を見ると、
「洗い物やお風呂等は大丈夫でしょうか? 昨日作った料理は大丈夫でしょうか? 改善までにどのくらいかかるのでしょうか?」
「刺身を扱う飲食店などはどうしたらよいですか? 手を洗うのに水道水をつかうのもヤバいわけですよね?まな板洗浄などは?」
「群馬県の水にジアルジアがいるって聞いたんですけど高崎、前橋、吉岡、榛東以外は飲んでも大丈夫ですか? 生水すごく飲んでたので心配です(>_<)」
といった質問が多数寄せられており、その不安ぶりが見て取れる。
もっともジアルジアの症状自体は比較的軽い上、現在は治療薬もあるため、「生命にかかわる病気ではありません」(厚労省)とされている。また群馬県水道課によれば、27日行った再検査では原虫は確認できなかった。担当者も、
「いわゆる安全宣言は原因究明が済んでからになると思いますが、市民の皆様に対しては『今のところは生水で飲んでも問題ない』とお伝えしております」
と話しており、ひとまず事態は沈静化に向かっているようだ。