円安批判は「お門違い」
韓国経済に詳しい、第一生命経済研究所・主任エコノミストの西濱徹氏によると、現在のウォン高の要因は、もともと韓国経済が経常黒字を抱えていることや、12年夏以降に格付け機関が相次いで信用格付けを引き上げたこと、欧米との自由貿易協定(FTA)が発効したことがあるという。
「アベノミクス」とは関係なく、むしろ「FTAにより、欧米向けの輸出競争力では日本を含む周辺国よりも数段高まっています」と指摘する。さらに米国経済が回復基調にあるのだから、韓国の企業活動は高まっていてもおかしくないはずなのだ。
ただ、一方で為替市場をめぐっては、韓国の金融当局が「覆面介入」してウォン安誘導しているとの疑念が付きまとっていた。
米国では韓国とのFTAが発効したことを契機に、「為替操作国」として調査する動きがあって、これまでのように韓国内の輸出企業が利するようなウォン安誘導を、公然と繰り返すわけにはいかなくなってきた。韓国としては、国内の輸出企業の優位性を維持する「カード」がなくなってきたため、日本の円安を食い止めたい思いばかりが強まっているということらしい。
「日本がG20でも主張したように、『アベノミクス』は結果的に円安になっていますが、脱デフレのための国内政策です。円安によって海外市場での日本の輸出企業の競争力がついてきたからといって円安批判を繰り返すのは、いわばお門違いといえます」と、西濱氏は話す。