アベノミクス効果で上昇する日本株に目を奪われがちだが、世界経済を見ても、米国を中心に景気回復が鮮明になってきた。
なかでも、新興国経済の持ち直しなどもあって、フィリピンやインドネシア、マレーシアの株式などに投資するファンドが注目されている。
好調なはずの株式投信、1月、じつは過去最高の解約
1ドル70円台という歴史的な円高は個人投資家にとって外貨建て資産を増やす好機になったが、一方で自動車や電機など日本経済を支える輸出産業を苦しめてきた。
それが、わずか3か月で1ドル90円台に乗せ、日経平均株価は約2000円も急騰し、2013年2月26日も終値で1万1398円81銭を付けている。アベノミクス効果で、日本株への投資熱は高まっている。
そうした中で、投資信託への注目も高まってきた。投信は、株式投資には手が届かない個人投資家でも、1口1万~2万円程度の小口で投資できるのが特徴。証券会社や銀行、インターネットでも手軽に購入でき、最近は国内外の株式や公社債で運用する商品だけでなく、原油や金、不動産(REIT)などに投資する商品も登場した。投資リスクも、ハイリスク・ハイリターンの商品からリスクもリターンも低い商品まで幅広い。いわば少額で、アベノミクス効果を享受できるかもしれないわけだ。
とはいえ、2013年1月の投信概況によると、株式投信の設定額は3兆2407億円だったのに対して解約額は3兆2845億円、償還額は714億円と、差し引き1152億円の資金純減となった。投資信託協会は「解約は過去最高でした」という。
その原因を、「利益確定売りがあったのと同時に、2009年ごろに大ヒットした通貨選択型タイプの投信を購入し、その後の超円高で損失を被った投資家が(価格の)戻りを待って手放したようです」とみている。
その一方、円安進行と好調な株式市況を背景に、「販売面でも5年ぶりの高い水準」だった。なかには、保有していた商品を解約した投資家が他の商品に乗り換えるケースも増えているようだ。
新興国ファンド、日本株よりも「上がりやすい」傾向
投資信託協会によると、アジアやオセアニアの株式や債券に投資するタイプの商品は、「続々と登場してきています」というが、まだ本数は少ない。
ファイナンシャル・プランナー(FP)の伊藤亮太氏は、「外国投信は、格付けがよくなって、経済見通しがよくならないと、なかなか設定されません。(投信会社が)販売するには早すぎると考えるようです」と説明。フィリピンやインドネシアなどに投資するファンドが少ないのはそのため。
しかし、そこが「狙い目」でもある。たとえば、インドネシアは2012年こそ貿易赤字に転落したため、通貨ルピアの価値が下落したが、13年は米国や中国の景気回復を背景に輸出が好調、黒字が期待できる。円安・ルピア高になれば、ファンドの基準価額も上昇が見込めるというわけだ。
伊藤氏は、「フィリピン経済は好調ですし、そもそもインドネシアは金融危機のときも(経済の)プラス成長を遂げた国です。今だから期待できる国と考えれば、先行投資するメリットはあります」と話す。
投信は株式投資と異なり、長期投資が基本。相場に上げ下げはつきものだ。伊藤氏は、「新興国ファンドはリスクもありますが、日本株よりも上がりやすいともいえます。個人の場合は10年くらい、1万円ずつでもこつこつと投資して、一方で持ちすぎず、『目標に到達したら売る』というようなことも考えて投資するのがいいかもしれません」と、アドバイスする。