燃料漏れやバッテリーの発火事故でボーイング787型機の運航見合わせが続いている問題で、その影響が新年度の夏季ダイヤにも波及しだした。
1~2月は比較的需要が少なく影響は限定的だったが、春休みやゴールデンウィーク(GW)になっても欠航が続けば、ダメージは広がることになる。
羽田-新千歳、福岡のドル箱路線から「間引く」
全日空(ANA)は2013年2月25日、夏季ダイヤが始まる3月31日から5月31日にかけて、国内線1250便、国際線464便を欠航すると発表した。
1日あたりの欠航便数は10便~26便。国内線では、羽田-新千歳、羽田-福岡といった運航本数の多いドル箱路線から「間引く」ことを中心に対応するが、787でしか運航できない成田-サンノゼ線などは路線ごと運休が続く。
787の運航見合わせは1月16日から続いており、累計の欠航便数は国内線が2662便、国際線が939便に及ぶ。
ANAが1日に飛ばす国内線の1027便は(2012年)。全体の便数と比較すると欠航の割合は数%に過ぎない。だが、1月だけで売上高が約14億円減少し、2月上旬に予定していた中期経営計画の公表も4月に延期するといった影響がすでに出ている。
運航が停止された1月から2月は比較的乗客数が少ない時期だが、3月以降は例年乗客が増えるため、欠航によるダメージも広がる可能性がある。12年の国内線の輸送実績を見ると、1月は295万人、2月は301万人とほぼ横ばいだが、春の行楽シーズンが訪れる3月には351万人に急増。4月には296万人と落ち着くが、5月には333万人に伸びる。このような状況で欠航が続くと、満席が相次ぐ春休みや大型連休には乗客を「取りこぼし」た結果、収入減につながりかねない。
早期に運航再開できれば欠航は減る
一方、日本航空(JAL)は3月30日までに国際線延べ94便を欠航することを発表している。13年1月~3月の売上高は11億円減少し、収支としては7億円のマイナスだ。4月以降は代替機のボーイング777型機の定期点検の影響で機材繰りが厳しくなり、欠航が増える見通し。2月25日に予定していた成田-ヘルシンキ便の開設も延期した。なお、JALは国内線では787を運航していない。
ANAでは、
「787の復帰の状況によっては必要に応じ、欠航した便の復便等の必要性を検討して投入する可能性はあります」
と787の運航が早期に再開されれば欠航の便数も減らせるとみているが、運航再開の見通しは立っていない。
787の製造元のボーイング社は米連邦航空局(FAA)に対して、バッテリー内で熱が伝わりにくくするなどの運航再開に向けた改善案を提示しているが、発火事故の原因究明に至っていないことには変わりなく、FAAが運航再開を認めるかは不透明だ。
日本政府も、運航停止の長期化を踏まえた対応に乗り出した。国土交通省は2月26日、787運航停止にともなう航空会社への支援策を発表。(1)空港内に787を留め置く際の停留料を免除する(2)配分された発着枠の使用率が80%を切った場合、その後の枠配分で不利になるルールがあるが、787の影響が出ている路線については適用を免除する(3)機長は年に1回実際の路線で実技試験を受ける必要があるが、運航停止で試験が行えないため模擬飛行装置(シミュレーター)などでカバーする、といった内容だ。