自民党総務会長の野田聖子衆院議員(52)が、妊娠中絶の禁止を唱えたと一部で報じられ、ネット上で論議になっている。発言の真意ははっきりしないが、反応は賛否に分かれている。
野田聖子議員は、佐賀県武雄市で2013年2月23日に講演しており、その後に記者団に囲まれて発言したらしい。
「禁止する代わりに、養子縁組を斡旋」
発言を報じた朝日新聞の記事によると、野田氏は、妊娠中絶が年間20万人に上るとされる中で、「少子化対策をやるのであればそこからやっていかないと」と切り出した。そして、「堕胎禁止」について、党内の人口減少社会対策特別委員会で参院選後に検討してもらうつもりであることを明かした。
禁止する代わりに、例えば、養子縁組を斡旋するための法律を作り、生まれた子どもを社会で育てていける環境整備をすることが必要だと訴えたという。
妊娠中絶について、野田氏は、日経ビジネスオンラインの10年2月15日付インタビュー記事「自民党が少子化を加速させた」で持論を述べたことがある。
記事では、「私は、思い切って母体保護法に手をつける、つまり中絶禁止までコミットしてもいいぐらいの気持ちです」と明かした。そして、「自民党はずるくて、『中絶は女性の権利だ』と言って逃げていた。でも本来、女性の権利はちゃんと避妊できることで、中絶できることではない」と指摘していた。
ただ、「もちろんこれは相当極端な話で、現実には難しいです。私が言いたいのは、それぐらい『えぐい』テーマにしないとだめだと言う事です」とも言っている。
今回の発言は、さらに踏み込んで、中絶禁止に向けて動き出したということなのか。
野田氏の国会事務所に取材すると、政策秘書が不在といい、すぐに話を聞くことができなかった。
過去には、重度の障害なら堕胎認める発言も
発言の真意は不明のままだが、ネット上では、報道内容について、様々な意見が上がっている。
中絶禁止に反対する意見としては、生まれてきた子どもの立場を考慮すべきだとの声が多い。養子に入れば、差別されたり不利な扱いを受けたりするとして、「そんなに不幸な子供を増やしたいのか」といった批判がある。「望まれなかった子供が増え、虐待とかの増加につながったりしないか」との声もあった。ルーマニアのチャウシェスク政権時代のように、中絶を禁止すれば捨て子や浮浪児が増えるとの声も上がった。
賛成の意見も広く見られ、「子供欲しい人に上手に渡せればね、いいね」「毎年20万人の中絶が無くなれば、人口増加して経済良好」「移民政策よりマシだろ?」といった声が出ている。一方で、レイプ被害の場合は中絶を認めないとおかしい、出生前診断で重度の障害が分かったら堕胎できるようにすべき、という意見もあった。
野田聖子氏は、不妊症に苦しみ、高齢や共働きから養子縁組も断られた結果、米国で卵子提供を受けて出産した経験がある。そのとき子どもに重度の障害があることが分かったが、アエラ2011年4月18日号のインタビュー記事では、「どんな子どもでも産むと決めていた」と明かしている。ただ、「同じ状況で中絶を選ぶ人のことは責めません」と述べており、野田氏が、どんな状況でも中絶禁止にと考えているわけでは必ずしもなさそうだ。