「これに代わるものがあるなら、具体的に出してほしい」
しかしこれらの批判に、小野市の担当者は反論する。
同市の場合、生活保護受給問題が相当深刻なのかと思われるが、実際の受給者数は人口5万人中149人(0.29%)と県内2位の少なさで、全国平均(1.38%)も大きく下回る。また不正受給の例もごく少数だという。ではなぜあえて条例案制定に踏み切ったかのか。
「社会保障費の負担が次の世代、さらに次の世代にまでのしかかる中、市としての姿勢を明らかにしたい、自らの襟を正したいという思いがあった。またこうした義務指針を公にすることで、『小野市の生活保護受給者は不正をするような人たちではない』と知らしめたかった」
「監視強化」の方策というよりは、小野市としての理念を示すという性格が強いようだ。
現状でも、11年度には不正受給に関して2件の市民から通報があるなど、生活実態を知る「身内」からの声を不正把握に活用してきた実績があると担当者は胸を張る。それを監視社会だといわれるのには心外なようだ。
「学者の方々の論評はありがたいご指導とは考えておりますが、私どもは私どもとして、対策と理念を示したつもりです。これに代わるものがあるなら、具体的に出してほしい」
生活保護をめぐる実態を誰より目の当たりにしているだけに、担当者の丁寧な口調にも力がこもった。
さらにあまり報じられていないが、「通報」を求めているのは不正やパチンコだけではない。第5条第2項では、苦しんでいる「要保護者」に気づいたら、こちらも速やかに通報することを求めている。「条例がもし可決されれば、むしろ受給者は増えると思います」と担当者は語り、いわゆる「受給の厳格化」とは考えを異にしている様子だった。
「一過性の議論ではなく、本当の支援とは何かを考えていきたいと思っております」