粉飾決算の不祥事による危機をどうにか脱したオリンパスが、今度は本業のデジタルカメラの不振に苦しんでいる。高機能なカメラの付いたスマートフォンが猛烈な勢いで普及するなか、低価格帯のデジカメの居場所が失われつつあるためだ。
2月12日の2012年4~12月期連結決算発表会見の席上、竹内康雄専務は2013年3月期連結決算を発表する5月中旬までに、デジカメ事業の構造改革策をまとめる方針を表明した。
13年3月期の業績予想を下方修正
オリンパスはこの日、2013年3月期のデジカメの販売台数の計画を620万台に下方修正した。当初計画では820万台だったものを、11月に710万台に下方修正したのに続く引き下げ。スマホのカメラ機能向上に伴い、1万~2万程度の価格帯のコンパクトタイプのデジカメの売れ行きが悪くなっていることが大きい。
確かにネットにつながったスマホで撮れば、少ない操作かつ1台でフェイスブック(FB)などの交流サイト(SNS)に瞬時に写真をアップすることができる。わざわざコンパクトデジカメで撮ったものをパソコンに移してFBなどにアップするような面倒な操作は不要となれば、必ずしも高機能とは言えないコンパクトデジカメを買う意味が薄れる層が出てこざるを得ない。
竹内専務は、コンパクトタイプだけでなく、オリンパスの得意技であり5万円以上するものが多いレンズ交換式の「ミラーレス」デジカメも、「期待ほど伸びていない」と述べており、事態の深刻さをうかがわせている。
このため、デジタルカメラを中心とする「映像事業」の営業損益は2013年3月期に160億円の赤字となる見通し。オリンパスは得意の医療事業は引き続き好調だが、デジカメが足を引っ張る格好で、2013年3月期の業績予想についても最終損益は60億円の黒字(前期は489億円の赤字)と従来予想から20億円下方修正した。
ソニーとの協業も市場の期待ほどは進まず
国内だけでなく、中国など成長市場でもスマホ拡大がデジカメ販売に影を落としている。オリンパスだけでなく、ソニーや富士フイルムホールディングスも2012年4~12月期連結決算発表の際に通期のデジカメ販売台数見通しを下方修正する事態となっている。
オリンパスの株価は1月22日の取引時間中に一時2000円台を回復。ウッドフォード元社長の解任を発表した2011年10月14日以来、約1年3カ月ぶりに大台に乗せた。その後も日本株全体の上昇気流に乗る形で堅調だったが、2月12日の下方修正を受けて再び、一時2000円を割り込んだ。市場からは「キヤノンやニコンのように高級機の実績がないデジカメ事業が不安」(国内大手証券)との声も聞かれる。
デジカメ事業は、資本提携したソニーとの協業が、市場の期待ほどには進んでいない。部品などの相互供給にとどまっており、赤字の止血にも役立っていない模様だ。5月までにまとまる構造改革策がどのようなものになるのかを、市場が注視している。