日本を代表するバンド・サザンオールスターズの「TSUNAMI」――2000年1月にリリースされ、年内に約300万枚を売り上げる驚異の大ヒットを飛ばしたシングルだが、11年3月11日に発生した東日本大震災の影響で、一時期テレビやラジオでの放送が自粛されていた。
まもなく震災から丸2年。その後どうなっているのだろうか。調べてみたところ、徐々に放送されているが、カラオケでの人気はどうやら回復していないことがわかった。
桑田佳祐「TSUNAMIを歌うモチベーションがなかった」
「TSUNAMI」は当時大人気だったテレビ番組「ウンナンのホントコ!」内の企画「未来日記III」のテーマソングで、サザンオールスターズのファン以外の若い男女にも人気を博し、大ヒットした。00年のオリコンシングル年間ランキング1位、年間カラオケチャートでも1位を獲得している。
その後も、過去のヒット曲を振り返る番組などで放送されたり、ラジオ番組でたびたびリクエスト曲として寄せられたりと、長年人気ぶりを見せていた。
しかし、東日本大震災で発生した津波の影響で「タイトルが災害を想起させる」などとして、テレビやラジオで放送自粛となった。
サザンオールスターズの桑田佳祐さん自身も、ライブで「TSUNAMI」を歌うことを控えている。理由について、震災から1年の12年3月10日、ラジオ番組「桑田佳祐のやさしい夜遊び」(TOKYO FM系)で「空気を読んだわけじゃないですが、被災された方や遺族の中にはファンもいた。この曲を歌うモチベーションにはつながらなかった」「いつか悲しみの記憶が薄れ、この曲を歌ってくれという声があれば、復興の象徴として歌える日が来たらいいと思っている」と話していた。
現在は、テレビやラジオで放送されることがだんだん増えてきている。
常にランクインしていた「DAMベスト50」から消えた
しかし、カラオケ利用客の間ではいまだ「自粛ムード」が広がっているらしい。
インターネット上では、以前カラオケでTSUNAMIを歌っていたという人が「前は歌っていたが、死ぬまで完全封印」「俺は歌っても平気だが聴いてる人間の中に例えば親類が被害に遭った人とかいたら困るからやっぱ歌えないな」などと書き込まれており、「不謹慎」「被災地に配慮が必要」と思っている人が多いようだ。
サザンオールスターズのファンが集まり、カラオケも楽しめるバー「E★SPOT」(大阪・北区)によると、震災発生直後は世間に合わせて自粛するような形で誰も歌っていなかったが、1年経った頃から徐々に歌う人が見え始めた。曲の内容は自然災害を連想するようなものではなく、店内という限られた空間で気分を害する客もいないので、震災とは切り離して考えているという。
ただ、店で利用している通信カラオケ「DAM」で、全国でよく歌われている曲のベスト50を見ると、震災以前は常にTSUNAMIがランクインしている状態だったが、今は全く入っていない。これまではファンではない人も広く歌っていたが、世間一般ではまだ自粛の動きがあるのかもしれない、と話していた。