スウェーデンの家具販売大手「IKEA(イケア)」が、日本で好調に売り上げを伸ばしている。
低価格と9500品目もの豊富な品揃え、デザインのよさで消費者に浸透した。自分で組み立てる、いわゆる「DIY」方式が特徴だ。2012年8月期の売上高は前期比15%増の674億円で、国内大手の大塚家具(545億円、12年12月期)を上回った。
12年8月期の世界売上高は過去最高
イケアは、欧米やアジア、オセアニアなど44か国に店舗展開する世界最大の家具チェーン。グループ全体の2012年8月期(11年度)の純利益は前年同期に比べて8%増の32億ユーロ(約3767億円)、売上高は同9.8%増の276億ユーロ(約3兆3000億円)で、いずれも過去最高となった。
このうち、日本国内の売上高は674億円。イケア日本法人のミカエル・パルムクイスト社長が2013年2月20日に開いた千葉県船橋市の本社での会見で明かしたものだが、日本の売上高を公表するのは初めてだった。
イケアは2006年、船橋市に1号店をオープン。その後、イケア港北(横浜市)やイケア鶴浜(大阪市)、12年4月にはイケア福岡新宮(福岡県新宮町)を出店し、現在は全国に7か店を展開している。14年中に仙台市に大型店を出店する予定があるなど、15年には10か店に増やす計画とされる。
世界規模の調達力を生かした「低価格」と「デザインのよさ」が売りで、北欧らしいデザインの家具や機能性の高いインテリアは、自社で抱えるデザイナーによるものという。
イケアの家具が安価なわけには、「自分で組み立てる」ことがある。消費者が自分の家で家具を組み立てることで流通コストや人件費を抑えるわけだが、この「DIY」(Do It Yourself)の手法が意外に好評で、たとえば机や本棚などを自分の手でつくる楽しみもある、というのだ。
市場調査の矢野経済研究所によると、国内の家庭用家具市場は2012年に6650億円(予測値)にのぼる。市場規模は11年に比べると290億円ほど拡大したものの、5年前(08年)との比較では1500億円超も縮小している。
そうした中で、イケア日本法人は売上げを伸ばしてきたことになる。
同研究所は「景気低迷が続く中で低価格志向が根強い」と分析。半面、「ライフスタイルのグローバル化でインテリアへの関心やこだわりが強まり、環境によいもの、品質のよいものを、愛着をもって長く利用したいというニーズが高まっている」とも指摘している。
モデルルームで、「自分の部屋をイメージさせる」
イケアは、店舗づくりに特徴があり、売り上げにも貢献しているとみられる。郊外に「イケアストア」と呼ばれる、売り場面積が通常約4万平方メートルという大規模な店舗を構え、最寄りのターミナル駅などから直行バスを運行するなどで集客している。
店内は、家具や雑貨をテーマごとに配置するモデルルームをいくつも用意し、消費者は家具が実際に自分の部屋に置かれた状況をイメージしながら、気に入ったデザインの家具をしぼり込める。買いたい家具があったら商品番号を控えて、レジに向かう前に倉庫からピックアップする仕組み。
選んだ商品を持ち歩くこともないので、店内のレストランやホットドッグなどの軽食コーナーで休憩しながら、ゆっくり商品を見て回れる。持ち帰れない商品は配送してもらえる。
終日すごせる、ちょっとしたテーマパークのようで、レストランなどの売り上げも他の家具店にはない「収入源」のようだ。