農林水産省は食べても太りにくいコメや中性脂肪を低下させる効果の高い大豆など、健康増進に役立つ農作物の開発を進める方針を明らかにした。
太りにくいコメは、食べても消化が遅く、血糖値が上がりにくいため、従来のコメに比べて脂肪がつきにくい機能があるという。農水省はメタボリックシンドロームなどで健康管理を目指す中高年の消費者向けに、太りにくいコメなどを提供することで、健康増進と国内農産品の需要拡大を目指す方針だ。
15年度までに試験的に売り出す
食べても太りにくいコメは、農水省所管の独立行政法人「農業・食品産業技術総合研究機構」が新品種を開発中で、食後の血糖値が上がりにくい効果が確認されている。現状では一般のコメに比べて硬く、食味で劣るのがネックとなっており、同機構が品種改良を進めている。2015年度までにショッピングセンターなどを通じて試験的に販売するという。
農水省は肥満、高血圧、糖尿病などで悩む消費者向けに、太りにくいコメや大豆などを開発することで、健康に関心の高い中高年者を中心に新たな農産品の需要が高まるとみている。
太りにくいコメなどの品種改良は、遺伝子解析の技術が進んだため、特定の効果のある遺伝子の交配で実用が可能になった。将来的には特定のアレルギー物質を取り除いた農作物の実用化も目指している。これらの技術は遺伝子組み換えではなく、遺伝子の解明に基づく交配で、品種改良を行うのだという。
白米だが血糖値が上がりにくい
農水省は同機構が太りにくいコメなどを開発し、本年度から2015年度にかけ流通業界などと販売の実証実験を行うため、2012年度補正予算で20億円を確保した。「2013年度にある程度の成果を出し、4年後を目標に実用化を目指したい」としている。
「太りにくい」「ウエストサイズが低下する」などと称するコメは、一部の商品として既に民間で出回っているものもある。一例を挙げるなら、ファンケルの発芽玄米などが有名だ。ただし、これは白米ではなく、玄米だ。玄米は元々、白米よりも血糖値が上がりにくい効果があるため、その効果をうたっているようだ。
今回、農水省が開発し、試験販売しようとしているのは、玄米ではなく、通常の白米でありながら血糖値が上がりにくく、太りにくいコメというのがセールスポイント。その意味で、市販されている発芽玄米などとは違うという。政府の資金を受けた研究機関が品種改良で新たなコメを作り、大学の医学部などで実際に人間が食した場合の効果について臨床実験を行い、農水省として「太りにくい」効果を公式に認めて販売するコメとしては初めてになる。