南極海で行われている日本の調査捕鯨船団に対する妨害活動を続けている反捕鯨団体のシー・シェパード(SS)が、今季2度目の妨害活動を行った。水産庁によると、SSの船が日本側の船に「異常接近して、給油を妨害」し、その際に複数回にわたって接触した。
だが、SS側は、「日本側が突っ込んできた」と独自の主張を展開。日本側が衝撃手榴弾(concussion grenade)を使用したとして非難を強めているが、海上保安庁では、使用したのは、人に危害を与えない「警告弾」だとしており、ことごとく話が噛み合わない状態になっている。
3隻が計4回接触し、日新丸の手すりが破損
水産庁の発表によると、2013年2月20日午前11時ごろ(日本時間)から約1時間にわたって日本側の船団が妨害行為を受けた。妨害を行ったのはスティーブ・アーウィン(SI)号(オランダ船籍)、ボブ・バーカー(BB)号(同)、サム・サイモン(SmS)号(オーストラリア船籍)の3隻。母船の日新丸がタンカーから給油を受けようとしたところ、3隻が異常接近した。その際、少なくともSI号が1回、BB号が2回、SmS号が1回、日新丸と接触した。日新丸には船首部分にへこみができ、手すりが破損するなどしたが、乗組員にけがはなかった。この妨害の影響で、給油作業は中断された。SSは2月15日にも船団に異常接近するなどの妨害行為を行っており、妨害行為は12年度としては2度目。
SS側も、日本批判を強めている。日本側はBB号について、日新丸と補給船の間に割り込んで、船首をタンカーに衝突させたと主張しているが、SS側は「BB号は進路と速度を維持しようとしており、衝突を避ける道義的・法的義務は日新丸にある」と主張。衝突について「(日本側が)突っ込んできた」と発表している。
それ以外にも、SSの発表やオーストラリアのAAP通信によると、SSは日本側に対して(1)南極条約では南緯60度以南での給油を禁じており、日本はそれに違反しようとしていた(2)日新丸のメンバーが衝撃手榴弾を投げつけてきたと批判している。
海上保安官が投げつけたのは「衝撃手榴弾」ではなく「警告弾」
これらの批判に対しては、水産庁は
「シー・シェパードが指摘しているような違反の事実はない」
とコメントしている。なお、南極条約では、「南極地域における生物資源を保護し、及び保存すること」について各国が会合を持つことが定められているが、洋上給油に関する記述はない。妨害を受けた場所の経度や緯度は公開されていない。
SSの妨害活動を受け、安全対策の一環として11年度から海上保安官が船団に同行している。海上保安庁の発表によると、今回海上保安官がSSに対して使用したのは「衝撃手榴弾」ではなく、「警告弾」。「衝撃手榴弾」は、爆発の破片ではなく衝撃波で敵を攻撃するとされる。警告弾は性質が大きく異なり、海上保安庁では
「手投げ式ボール状のもので、海上保安官が職務の執行に際し警告の意思を表すために用いるもの。海上保安官が投てきしたあと数秒後に空中で、パンッという音響を発するもの、閃光を発するものなどがある。用途から人に危害を加えるものではなく、武器には該当しない。国内外の密漁取り締まり等の通常業務においても使用している」
と説明している。11時3分頃から11時38分頃にかけて、妨害船3隻の後方に向けて、計4発を手で投げたという。ここでも、SS側の主張と日本側の主張は、大きく食い違っている。