ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)日本代表の最終メンバーが決定した。3連覇に向けて「侍ジャパン」の戦いが本格的に始まる。
だが、強化試合で広島東洋カープを相手に完敗して不安を残した。指揮官の山本浩二監督に対しては、「カープ監督時代の10年間でBクラス7回」と、その力量を疑問視する声もくすぶっている。
大枠の方針を決めたら、あとはコーチに任せる
WBCで日本は、1次ラウンドで中国、キューバ、ブラジルと対戦し、2位までに入れば2次ラウンドへ進む。このラウンドでも、上位2チームが決勝ラウンドの切符を手にすることができる。1次、2次ラウンドは日本で試合が組まれており「地の利」があるが、短期決戦に国際ルールと通常のプロ野球とは違う戦い方を求められる。現場から離れて久しい山本監督の手腕が問われるだろう。
早速「けん制球」を投げてきたのは、WBCで日本のライバルとなる台湾の新聞「聯合晩報」電子版だ。2013年2月17日付の記事で山本監督の広島の監督時代に触れ、「予算面で巨人のようなチームに及ばなかったためか、10年間の監督成績は芳しくない。リーグ優勝がわずか1回で、(4位以下の)Bクラスは7回だった」と指摘している。第1回WBCの監督だった王貞治氏は、福岡ダイエーホークス(現・福岡ソフトバンクホークス)で日本一2度、さらに読売ジャイアンツの監督時代と合わせてリーグ優勝4度を経験した。前回「侍ジャパン」を率いた原辰徳監督も、巨人で日本一に3度輝いている。
山本監督は1989~93年と、2001~05年に広島の監督を務めた。「Bクラス7度」は確かだが、このうち4位だった1992年は首位とわずか3ゲーム差で勝率も5割を超えている。2001年は順位決定で勝利数が勝率より優先された方式だったため4位に甘んじたが、勝率では3位だった。「金持ち球団」とは言えないチームは、監督にかかわらず昨季まで15シーズン連続Bクラス。これで山本監督だけを責めるのは酷だろう。
スポーツジャーナリストの菅谷齊氏は、山本監督の采配について「ひらめきで投手交代や代打を送るタイプではない」と解説する。自身は大枠の方針だけを立てて、実務面は各コーチに任せるようだ。今日の野球では分業化が進んでいるうえ、「侍ジャパン」は一流選手、コーチが集まっている。監督があれこれ細かく指示する場面は少ないとの見方だ。菅谷氏はまた、巨人の橋上秀樹コーチを戦略コーチに据えた点も注目。データ分析に長けた頭脳派参謀として巨人の日本一を支えた能力を、日本代表の戦い方にも生かせるという。
「おおらかで人柄がよい」という山本監督であれば、コーチ陣や選手とのコミュニケーションに問題はない。「コーチは仕事をしやすいでしょうが、それだけ責任も重大」と指摘する。