「殺人ダニ」感染症に日本パニック 実は何百年も昔からあった病気

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   新たに発見された感染症「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)」が、日本列島を騒がせている。媒介するのは日本中どこにでもいるようなマダニ、しかも致死率は10%を超える。2013年2月19日には広島県で4人目の死者が確認された。

「恐怖『殺人ダニ』感染症で4人目の死者」(サンケイスポーツ)
「殺人ダニ国内初確認『SFTSウイルス』死者4人の脅威」(ミヤネ屋)
「殺人ダニ 国内感染拡大」(朝ズバッ!)
「日本で4人目マダニ"感染死"」(news every.)

   ホラー映画さながらの見出しで、メディアも恐怖をあおり立てる。ところが、専門家は意外と淡々とした反応だ。どうやらこの騒動は、いささか勇み足気味らしい。

防ぐには、とにかく肌の露出を減らす

   SFTSウイルスは2011年、中国で発生した原因不明の疾患を調査する中で発見された「新しい感染症」だ。媒介するのは屋外に生息するダニの一種「マダニ」で、日本全国の野山を始め、都会などにも普通に出没する。

   ウイルスに感染したこのマダニにかまれることで発症し、発熱のほか、食欲低下や嘔吐(おうと)、下痢・腹痛などといった症状、さらには頭痛や筋肉痛、意識障害やけいれんなども引き起こすこともある。最悪の場合、死に至る可能性もあるのは前述の通り。現時点ではワクチン、また「特効薬」も存在しないため、防ぐには、とにかく肌の露出を減らすなどして「かまれない」よう気をつけるしかない。

   国内では2013年1月30日、12年秋に死亡した山口県の女性が、最初のSFTSによる死者として確認された。その後も愛媛県、宮崎県、広島県在住の計4人が、SFTSによる死亡例として報告されている。

   これを聞くと、「殺人ダニがやってきた!」とパニックになるかもしれない。しかし、国立感染症研究所のウイルス1部部長・西條政幸氏によれば、STFSは、

「100年、それどころか1000年単位の昔から日本にあった病気だと思われます。少なくともここ最近、あるいは戦後といった時期に来たものではありません」

という。

今まで原因不明として扱われていた

   報道だけを見ていると、まさに今「殺人ダニ」のせいで死者が急増している、というような気がしてしまうが、実際には今回確認された死者はいずれも2012年夏~秋と少し前の話だ。「新型ウイルス」が突如として日本に襲い掛かってきた――というよりは、今まで原因不明として扱われていた症状の正体に、ようやく光が当たったというべきところらしい。病気自体の発生件数としても、

「あくまで比較論ですが、インフルエンザやノロウイルスのような多くの人が感染する病気と比べれば、極めて少ない」

と西條氏は話す。

「むしろ今回の発見で、今まで診断がつかなかった患者さんの状態がわかるようになった。これからの感染症対策には重要な発見です」

   もちろん厄介な病気であることは間違いなく、対策をとることは重要だ。一方で西條氏は、

「『危ない』と言って過剰に、たとえば山などに出かけるのを取り止めるというのは行き過ぎです。涼しい時期には長袖を着るなど、『今までどおり』の対応で十分だと思います」

と、「殺人ダニ」におびえすぎないよう注意を促した。

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