東京都の水力発電を巡って、都と東京電力が対立している。東京都が「電力の自由化」を錦の御旗に、東電との随意契約を打ち切って競争入札を導入すると決めたのだ。
東電は「途中解約だ」と、補償金約52億円の支払いを請求、都は「ぼったくりバーみたいな請求だ」(猪瀬直樹知事は)と強く反発、支払いを拒否しており、いまのところ双方が歩み寄る気配はなさそうだ。
2012年春に13年度以降の契約解除申し入れ
問題になっているのは、青梅市と奥多摩町のダムに設置された都営の多摩川第1、同第3、白丸の3水力発電所(最大出力計3万6500キロ・ワット)で発電される電力の売電契約。都は1957年から随意契約で東電に売っており、2011年度は約3万4000世帯分の年間使用量に相当する1億1210万キロ・ワット時を、約10億円で販売した。
しかし、単価が1キロ・ワット時当たり9円程度と低いほか、東日本大震災後に都内の電力が不足したことから、都は当時副知事だった猪瀬氏を中心に、リスク分散のためにも、地域電力会社とは別に電力を供給する新電力(PPS、特定規模電気事業者)を育成する方向に舵を切り、都営水力発電の契約も見直した。競争入札を導入すれば東電との随意契約よりも高く売れるし、PPSも育成できる「一石二鳥」の狙いだ。
報道で注目されたのは最近だが、都は2012年春に、こうした方針のもとに東電に対し、2013年度以降の契約解除を申し入れ、10月の都議会では、条例を改正して東電以外にも売電できるようにしていた。