いわき市で復興支援活動を続けているNGOの「シャプラニール=市民による海外協力の会」の会報「南の風」第257号(2013年2月1日発行)が届いた。「いわき市に暮らす人々とシャプラニールの取り組み」を特集している(=写真)。
いわきでのシャプラの活動は、(1)被災者のための交流スペース「ぶらっと」の運営=イトーヨーカドー平店2階に開設 (2)月1回、情報紙「ぶらっと通信」を発行=主に借り上げ住宅で暮らす津波被災者・原発避難者に郵送 (3)「ぶらっと」へ来られない世帯への戸別訪問=高齢者のみの世帯、障がい者のいる世帯、独居世帯などが対象――が柱になっている。
東日本大震災・原発事故から来月11日で丸2年。「南の風」の特集もそれを踏まえたものだろう。特集で紹介されている個別・具体的な事例から、あらためて津波被災者や原発避難者の困難な状況を知る。
・「ぶらっと」利用者の事例(原発避難で借り上げ住宅に住む60代の夫婦)――。
津波で娘と孫を亡くした。以来、妻はうつ状態が続き、薬を飲んでいる。夫も肺に水がたまり、通院している。アパートに届く「ぶらっと通信」を見て、「ぶらっと」を利用するようになった。思い切ってスケッチ教室に参加したら、とても楽しかった。いつまでも悲しんでばかりいられないと、今は夫婦で定期的に「ぶらっと」に来ることが楽しみになった。
・戸別訪問での事例(原発避難で借り上げ住宅に住む、相双地区の70代後半の夫婦)――。
震災前までは自宅で野菜を作り、婦人会や町内会の行事などで毎日忙しく、楽しく過ごしていた。避難所、郡山市のアパート暮らしのあと、いわき市へ移った。運転は危ないと息子に止められ、車を手放したことで外出の機会が減った。「ぶらっと」の利用者と招待旅行に参加したのを機に、毎朝の散歩が日課になり、近所に言葉を交わす顔なじみもできた。
日々のニュースに追われるマスメディアには、こうした個別・具体的な声は載りにくい。その結果、読者も、視聴者も津波被災者や原発避難者の心には深く触れ得ない。
なぜそんな感慨を抱いたかというと――。ちょうどこの時期、マスメディアの記者たちは「震災2年」の特集取材に追われている。「震災から1年」の昨年は全国紙の記者が、「震災から2年」の今年は放送記者が接触してきた。自分たちの特集・企画に合った人間や事例について情報・ヒントがほしい、ということだろう。
せめて節目のときには深く考えさせられる記事を、シャプラの「戸別訪問」のような被災者の「今」を伝える声を、という思いが募る。
(タカじい)
タカじい
「出身は阿武隈高地、入身はいわき市」と思い定めているジャーナリスト。 ケツメイシの「ドライブ」と焼酎の「田苑」を愛し、江戸時代後期の俳諧研究と地ネギ(三春ネギ)のルーツ調べが趣味の団塊男です。週末には夏井川渓谷で家庭菜園と山菜・キノコ採りを楽しんでいます。
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