2012年夏、尖閣諸島に強行上陸して日本を騒がせた香港の活動家グループが、あの手この手を使いながら、「釣魚島是中国的(尖閣は中国のモノだ)!」と主張し続けている。
中でも目を引くのが、尖閣に中国国旗を立てた写真をあしらった「米ドル紙幣」の発行だ。日本にとっては頭が痛い活動だが、一方でそこから彼らの寂しい懐事情もうかがえる。
「世界の多くの人々に歴史の真実を知らしめることができる」
問題の「尖閣ドル紙幣」は、2012年8月に尖閣諸島に不法上陸して逮捕された香港の活動家グループ・保釣行動委員会が販売しているものだ。
一見すると普通の1ドル紙幣なのだが、本来中央にあるはずのジョージ・ワシントンの肖像の代わりに、中国国旗(五星紅旗)の立てられた尖閣諸島が描かれている。そのすぐそばには、「中国 釣魚島 DIAOYU ISLANDS OF CHINA(中国領の尖閣諸島)」という表記まである。
この尖閣ドル紙幣、中央の「尖閣」の部分を除けば、「本物」とまったく違わない。
実は米国では、日本と違い認定を受けた業者が、本物の1ドル紙幣を元にアレンジしたこのような「オリジナル紙幣」を作ることを認めている。たとえばCelebrity-Cashなる販売サイトでは、マイケル・ジャクソンからピカチュウといった「有名人」、さらにはオーダーメードまで、多種多様な1ドル紙幣が5~7ドル程度で販売中だ。
今回の「尖閣ドル」も、こうした業者を利用して作られたものと見られる。業者が正規の認定を受けてさえいれば、実際に紙幣として使用することも可能だ。当然、米国政府が関与したものではないが、国際社会に尖閣領有の正当性を主張したい活動家たちからすれば、まさにうってつけといったところなのだろう。中国紙「中国貿易報」も、
「あの米国ドルに『中国釣魚島』の文字を載せたことで、世界の多くの人々に歴史の真実を知らしめることができるだろう」
と胸を張る。
4ドル分と切手などで1セット1万5000円
保釣行動委員会ではほかにも、さまざまな形で尖閣領有を訴える活動を続けている。たとえばフェイスブック上にも公式ページを作り、毎日のように更新を続けている。尖閣問題を報じる内外のニュースや、活動の様子などが投稿されているほか、香港のみならず台湾やマカオなどからも「連帯」のコメントが寄せられている。
こうした活発に見える保釣行動委員会の動きだが、一方で彼らを悩ませているのは「資金不足」という現実的な問題だ。12年8月の上陸直後、委員会の幹部が環球時報のインタビューに答えたところによれば、同団体の資金源の大半は実入りの少ない街頭募金で、年間250万円近くもかかる抗議船の維持費だけであっぷあっぷ状態だ。メンバーは運転手など別の稼業でなんとか生計を立てているそうだ。さらに別の報道によると、頼みの抗議船も尖閣上陸でボロボロになってしまったという。
同団体のツイッターを見ても、プロフィール欄の一番目立つところに書かれているのは銀行の口座番号、つまりは「寄付」のお願いだ。上記の「尖閣ドル」も、アピールはもちろんだが、結局のところは「お金がない!」というところが大きいらしい。
ちなみにその価格だが、4ドル分と切手などがセットになって実に1280香港ドル、日本円で1万5000円超だ。限定1万セットとのことで、ウェブサイトなどで購入を受け付けている。