「人生の価値観に影響を与えるメディアは何か」をテーマにした調査で、興味深い結果が出た。ネットメディアが新聞を上回ったのだ。
この調査では、新聞は年齢が若くなればなるほど「影響力」が低下し、20代になると半数以上が「影響を受けない」と答えている。専門家は、かつてと違って若者が新聞を「特別な存在」に位置付けなくなったとみる。
新聞サイトではなくポータル経由でニュース読む
調査を実施したのは、輸入住宅販売のセルコホーム(仙台市)。「住まい方に関する意識調査」で、2000人を対象にした生活空間、環境にまつわる各種質問と回答を2013年1月31日に同社ウェブサイト上で公開した。質問項目のひとつに「メディアが住まい方、価値観にどう影響しているか」がある。
「人生の価値観に影響を与える」と答えた人が最も多かったのがテレビで77.8%だが、2位につけたのが「ソーシャルメディアを除くネットメディア」の64.8%、新聞は60.9%で3位だった。年齢別に見ると新聞は、50代では73.6%が「影響を与える」と答えているが、20代では45.6%にとどまる。裏を返すと5割超の回答者が新聞から「生き方」への影響を受けていないわけだ。ネットメディアについては、年齢別の分析がなかった。
上智大学文学部新聞学科の碓井広義教授(メディア論)に取材すると、「調査結果はいまどきの状況を反映していると思います」と言う。実際に指導する学生で、ひとり暮らしで新聞を購読したり、実家住まいで新聞を読んだりしている例は少ないそうだ。一方で、スマートフォンを駆使してネット上で多様な情報を入手しているという。その中には新聞社がネット上で流すニュースもある。セルコホームに問い合わせたところ、調査項目にある「ネットメディア」に新聞の公式サイトを含むかどうかは明確に定めていないと答えた。回答者は新聞サイトもネットメディアの一種と理解している可能性はある。
では若い世代は、紙媒体としての新聞から離れてネット媒体の新聞に移っただけなのか。だが碓井教授は「いえ、新聞そのものと距離を置いている印象を受けます」。かつては「生活の一部」として敬意が払われていた新聞も、今の若者にとっては数多くある情報源のひとつに過ぎないというのだ。新聞通信調査会の「2012年メディアに関する全国世論調査」によると、ネットニュースを見るサイトで圧倒的に多かったのはポータルサイトで84.6%に達し、新聞・通信社の公式サイトの26.2%の3倍超だ。わざわざ「この新聞の記事を読みたい」と特定の新聞サイトを訪れるわけではない。ポータル経由で読むニュースに、「どの新聞社の配信記事か」を気にする読者がどれほど存在するかは疑問。それだけに「若い世代は新聞を特別視せず、ありがたみも感じていません」。