「高い本は売れない」覆す1万DLヒット
出版社側も、こうした空気を敏感に感じ取っているようだ。文藝春秋電子書籍制作室では、「11月末のキンドル発売ごろから、アマゾンに限らず各配信サイトでの電子書籍の売れ行きが伸び始めた」と語る。
さらに電子書籍というと、とかく「値段が安くないと売れない」「漫画以外は売れない」という風潮があるが、同社が12年11月から配信している横山秀夫さんの小説『64』(書籍版は12年10月発売)は、1600円という「紙の本並み」の値段にもかかわらず、2か月で1万ダウンロードを超えるヒット作になった。
「紙の本で売れているものは、値段が高かったとしても、電子書籍でもやはり売れる。そのため売れている単行本を、できるだけ早く電子書籍化することに、弊社では力を入れています」
他の出版社も同様に本腰を入れる。たとえば講談社では2012年以来、紙の本と電子書籍版の同時発売にいち早く積極的に取り組んでいる。漫画でも、角川書店が12年11月に紙・電子で同時発売した「新世紀エヴァンゲリオン(13)」(貞本義行、カラー・GAINAX)が、長くキンドルチャート全体の売れ行き上位に入るヒットを飛ばした。
「電子書籍4年」、2013年はそろそろ電子書籍が存在感を本格的に発揮する年になりそうだ。