北朝鮮が核実験で国際社会への挑発行為を繰り返すなか、米国が独自に「極秘訪朝」し、北朝鮮の説得を試みていたことが明らかになった。
複数回にわたって、高官を乗せた米軍機が平壌に飛んでいた模様で、「空軍基地などを観察する愛好者からの通報や飛行計画」で、日本は訪朝を把握したという報道もある。こうしたことから、日本が情報戦の「蚊帳の外」に置かれているとの見方も出ている。
ボーイング737型機がグアムから黄海上(韓国西海岸)を北上
朝日新聞が2013年2月15日朝刊の1面で報じたところによると、高官は少なくとも3回極秘訪朝している。朝日の記事では内容は詳しく触れられていないが、3回のうち、12年に行われた2回については、韓国メディアが比較的詳しく報じている。
12年の1回目のフライトは4月7日。朝鮮日報は5月24日にソウルの外交筋の話として、グアムから米空軍のボーイング737型機が平壌にフライトしたことを伝えている。航空当局の関係者が同紙に明かしたところによると、同日午前6時頃、国際航空固定通信網(AFTN)を通じて韓国・仁川の航空管制センター(ACC)に日本の福岡ACCから米軍機の飛行情報が入った。
米軍機は黄海上(韓国西海岸)を北上し、仁川ACCは約1時間にわたって同機を管制。その後、平壌ACCに管制を引き継いだ。この黄海ルートは、00年に金大中大統領(当時)が訪朝した際に使用したルートと同じだという。
米軍機は午前8時に平壌に到着し、正午頃に平壌を離れたという。かなりの過密スケジュールだということがうかがえる。
このフライトはロケットの打ち上げを断念するように説得することが目的だったとみられる。だが、説得は不調に終わったようだ。北朝鮮は、この6日後の4月13日にロケット打ち上げを強行したものの、打ち上げは失敗している。
5月22日には、朝鮮中央通信が、
「我々は、(北朝鮮でのウラン濃縮やミサイル発射凍結を定めた)2月29日の米朝合意にはもはや拘束されないにもかかわらず、実際の行動を自制していることを数週間前に米国側に伝えた」
という外務省スポークスマンの談話を伝えている。この「数週間前に米国側に伝えた」という記述が、極秘訪朝でのやりとりだとみられる。