大阪市立桜宮高校のバスケットボール部員が、顧問の体罰を苦に自殺した問題で、市教育委員会は顧問を懲戒免職とした。この処分が下される前、保護者ら1100人の「有志」が市教委に、顧問への寛大な処分を求める嘆願書を提出していた。
インターネット上ではこの行為に対して、「亡くなった生徒は助けなかったのに、顧問はかばうのか」と批判的な見方が多い。
大阪市教委「体罰で負傷させたら免職、停職、減給」と規定
嘆願書について市教委はJ-CASTニュースの取材に、「提出されたのは2013年2月12日の朝で、顧問の処分決定前」と説明した。顧問の懲戒免職処分はこの後で開かれた会議で話し合われ、その際に「嘆願書が提出された」という事実のみが報告されたという。「寛大な処分」を求めたが結局は免職となったことから、嘆願の効果はなかった。
市教委は、教職員を対象にした「懲戒処分に関する指針」を定めている。体罰の項目では、「児童・生徒に体罰を行い負傷させた教職員は、免職、停職又は減給とする」となっていた。今回は負傷させたどころか、ひとりの生徒が亡くなる最悪の事態。それだけに懲戒処分で最も重い免職と決まったのだろう。決定の報を耳にした大阪市の橋下徹市長は、「一線を超えた完全な暴力行為。処分内容は妥当だと思う」と支持した。
実は体罰を理由とした教員の懲戒免職は非常に少ない。2月7日放送の「とくダネ!」(フジテレビ系)では、体罰による免職は過去35年間でわずか3件にとどまり、いずれも生徒が死亡したケースだったと紹介した。この日出演した、埼玉県教育委員で原田教育研究所社長の原田隆史氏は、「免職以外にも、該当教員を教育現場から外したり、教育委員会の研修を受ける代わりに授業に出さなかったりといった処置をとる場合もある」と補足した。
体罰があれば、被害者から担任教師、校長を経由して教育委員会に報告が上がる仕組みだ。しかし「とくダネ!」で取り上げられた元教員の男性は、かつて生徒に対する体罰で懲戒処分を覚悟した際、校長が「大げさにしたくない」と握りつぶしたと証言した。公正な処分どころか、うやむやのまま収束したのだ。
こうなると、教員が体罰で「クビ」になるのは極めてまれだと考えざるをえない。
生徒自殺を「異常事態」と感じていないのか
顧問に対する同情は、今回の嘆願書が初めてではない。これまでも桜宮高の生徒や卒業生、保護者から擁護する声が出たとメディアが報じている。「先生がやってきたことは間違っていない」(産経新聞電子版1月8日付)、「生徒が亡くなったので全面的に擁護はできない。でも、体罰の裏側には愛情があった。先生が暴力教師のように報道されていることに納得がいかない」(同1月19日付)、「よく声を掛けてくれた。先生の全てを否定しないでほしい」(共同通信2月14日付)といった具合だ。
だがこうした擁護論に、ネット上の意見は厳しく突き放すものがほとんどだ。ツイッターを見ると、嘆願書を提出して「寛大な処分」を求めたことに対して「自殺した生徒は助けなかったのに、どうして体罰を続けた顧問をかばうのか」との指摘が複数見られた。卒業生やバスケ部OBは、体罰による誤った指導が「当たり前」のようにすりこまれて、生徒が自殺したのを「異常事態」だと感じていないのではないか、とまで書き込む人もいた。