海上自衛隊の男性海士長(29)が、電車内で女性の容姿を携帯カメラで無断撮影したとして、書類送検され、海自から停職5日の懲戒処分まで受けた。ネット上では、マスコミが撮ってもお咎めなしなのに、なぜ送検・処分されるのかと疑問がくすぶっている。
「男女不平等ワロタ」「週刊誌は何で許されるん?」…
男性海士長の送検と2013年2月12日付での懲戒処分が新聞報道されると、2ちゃんねるなどでは、こんな書き込みが相次いだ。
海自の海士長がつきまとって数枚撮影?
海上自衛隊の舞鶴地方総監部(京都府)などによると、舞鶴基地の業務隊に所属し、護衛艦で勤務する男性海士長は11年9月27日、広島県内から着任するため、JR山陰線の電車に乗った。そこで、かわいいと思う若い女性を見つけ、車内で立っているところを携帯電話のカメラで数枚撮った。すると、女性は、「この人盗撮しています」と騒ぎ出し、周りの乗客らが海士長を取り押さえ、警察に突き出した。
京都府警では、海士長を逮捕せずに任意で取り調べ、11月14日に軽犯罪法違反の疑いで書類送検した。京都地検は12月28日、起訴するほどではないとして、起訴猶予処分にしていた。
なぜ海士長は電車内で女性を撮影したことで、送検までされてしまったのか。
海自舞鶴地方総監部の広報担当者によると、海士長の上司が警察に出向いて話を聞いたところ、海士長は、軽犯罪法第1条28号のつきまとい行為になる疑いがあると説明された。
ただ、海士長が撮ったのは、移動中にたまたま居合わせた面識のない女性だといい、それだと、つきまとい行為を説明できない。しかし、はっきりとは分からないものの、海士長は女性に近づいて一緒に移動しながら写真を撮り続けた可能性があるのではないかと担当者はみている。
マスコミの撮影と何が違う?
無断撮影については、軽犯罪法では、浴場など通常衣服を着けていない場所での行為を第1条23号で禁じているだけで、電車内という公共の場所での規定はない。公共の場所での撮影としては、通常は、迷惑行為防止条例違反として、他人を著しく羞恥させ、不安などを覚えさせる卑わいな行為が禁じられている。京都府の条例でも、第3条に規定がある。
なぜ男性海士長の場合は、条例違反が適用されなかったのか。
海自舞鶴地方総監部の広報担当者によると、海士長が撮ったものには、わいせつな場面はなく、普通の立ち姿だったという。寝顔や胸元を撮ったものでもなかったため、条例違反とならなかった可能性があると担当者はみている。千葉県で2011年9月4日に会社員男性が条例違反の現行犯で逮捕・実名報道されたケースでは、電車内で女性の寝顔や胸元を無断撮影していた。
とはいえ、たとえ海士長が女性に近づいて一緒に移動しながら写真を撮り続けた可能性があるとしても、これはマスコミが通常行っているやり方だ。遠隔操作ウイルス事件の片山祐輔容疑者(30)についても、逮捕前に寄った猫カフェでくつろぐ様子などをマスコミ各社が様々な方法で撮影していた。
関係者によると、報道の自由という別の「大義名分」があるので、この海士長のケースと同列には論じられない、ということのようだ。
なお、海自の懲戒処分が起訴猶予の1年余り後になったのは、つきまといという軽犯罪法違反の事案が過去になかなか見つからず、停職か減給かなどを決めるのに時間がかかったからだという。