大阪市立桜宮高校バスケットボール部キャプテンの2年男子生徒(17)が自殺した問題で、大阪市教委は2013年2月13日、生徒への暴力行為を繰り返していたとして顧問の教諭(47)を懲戒免職処分にしたと発表した。報道各社で、この発表への対応が割れており、一部の社は「正式に懲戒免職処分を決めた」ことなどを理由に実名報道に踏み切った。
市教委は同日、外部監査チームの報告書を公表。顧問の教諭が恒常的に生徒に平手打ちなどの暴力行為を加えていたとして、暴力行為と自殺との関連を認定した。このことを理由に、市教委は初の体罰を理由とした懲戒免職処分に踏み切った。それ以外に、男子バレーボール部顧問の教諭(35)も、11年に体罰で停職3か月の懲戒処分を受けたにもかかわらず12年11月に再び体罰を行ったとして、停職6か月の懲戒処分を受けている。
停職3か月以上で名前が発表される
市教委の教職員人事担当によると、停職3か月以上の懲戒処分が行われた際は、処分を受けた人の名前も発表されることになっている。今回の顧問2人についても、通常のルールに従って発表された。ただし、処分の内容についてはウェブサイトに掲載されるものの、処分を受けた人の名前は、紙で大阪市政記者クラブ加盟社に配られるのみだ。
発表された内容をどこまで報じるかについては、報道各社で判断が分かれた。朝日新聞、読売新聞、日本経済新聞、共同通信は、懲戒免職になった教諭の名前を報じている。特に読売新聞は、停職6か月のバレー部顧問の名前も掲載した。
匿名を継続したのは、毎日新聞、産経新聞、時事通信。テレビは、全国ネットではNHKと民放の全局が匿名を継続した。
朝日・共同が「おことわり」
教諭の名前を掲載した社のうち、朝日と共同は「おことわり」で
「匿名で報じてきましたが、大阪市教委が外部監察チームの報告書などを踏まえ、教諭による生徒への暴力と自殺の関連を認めて懲戒免職処分としたことから、実名での報道に切り替えます」(朝日新聞)
「市教委が外部監察チームの報告に基づき正式に懲戒免職処分を決めたことや、事案の重大さを考慮し実名とします」(共同通信)
といった説明をしている。ただし、共同の「おことわり」の扱いは加盟社でも判断が分かれており、北海道新聞や西日本新聞では掲載されているものの、東京新聞では掲載されていない。
今回のケースでは、勤務先による処分は決定し発表されたものの、現時点では刑事責任を問われているわけではないことから、判断が分かれている模様だ。
一方、処分が決まっておらず、逮捕もされていない状態で名前が発表され、広く報じられるケースもある。実名を報じるかどうかの判断はケースバイケースだ。
例えば朝日新聞社は07年2月1日、東京本社編集局写真センター所属(新潟総局駐在)のカメラマン(当時46)が読売新聞社のウェブサイトから記事を盗用していたとして謝罪会見を開いている。この時点では、このカメラマンは東京本社管理本部付に異動させられて事情聴取を受けている段階だったが(後に諭旨解雇)、会見ではカメラマンの名前が公表され、翌2月2日の朝刊では大半の社が報じている。