「これでは最近話題の地方公務員の駆け込み退職と同じ結果になりますよ」。資生堂の40歳代後半の社員が不安を口にした。同社が2013年1月31日に発表した事業構造改革のことだ。
同社には45歳以上の社員を対象にした早期退職優遇制度がある。今回この制度を廃止するにあたり、「猶予期間」を設けたうえで対象年齢を「40歳」に引き下げ、あわせて転職先が決まるまでの一定期間に非常勤で雇用を継続する「転身準備非常勤制度」の廃止を決めたのだ。
「形を変えた退職勧奨といってもおかしくない」
新たな制度は、「1年半」の猶予期間に限り、早期退職の対象を「40歳以上の管理職」に拡大。従来どおり「退職割増金」を支払うが、それ以降は「早期退職優遇制度」そのものを廃止するので、割り増し退職金などの優遇措置が受けられなくなる。
資生堂は「肩たたきとは違う」と強調する。しかし、今の厳しい事業環境を考えれば「追加リストラの可能性が十分ある」(幹部)なか、従業員に極めて厳しい選択を迫る制度変更になる。「従来の制度では人減らしが進まなかった。形を変えた退職勧奨といってもおかしくない」。この社員は説明する。
「40歳」といえば、給与水準が比較的高い「バブル世代」だ。この世代に早期退職を促すことで人件費を抑えたいとの思惑も透けて見える。
同社の足下の収益環境は確かに厳しい。資生堂はこの数年間、国内市場の縮小を補うため、グローバル展開を加速してきた。だが、その最大の柱だった中国事業が2012年夏以降の日中関係の悪化で急速に腰折れし、シナリオは大幅に狂う恐れが出てきた。
今回下方修正された2013年3月期の通期業績予想によると、営業利益は245億円と前回予想(昨年10月31日)の400億円から155億円(38.8%)の大幅な下方修正。減少分の半分以上は中国での日本製品不買運動の影響だ。