人気女性声優のライブ中、熱狂する観客席のど真ん中に、重さ20キロ近い照明器具が降ってきた――
「もし直撃していたら……」
と、会場側の担当者も青ざめる。あわや大惨事のこの事故は2013年2月10日、東京国際フォーラム・ホールAで開催されていた「戸松遥 second live tour Sunny Side Stage!」の真っ最中に起こった。
戸松遥さんの歌声に、会場は大熱狂
この日、同会場では女性声優の戸松遥さんのライブが行われていた。
戸松さんは23歳、これまでに「かんなぎ」や「ソードアート・オンライン」など数々の人気アニメでメインヒロインを演じたほか、歌手としても最新アルバム「Sunny Side Story」が初登場5位、ほかの女性声優と組んだユニット「スフィア」もヒット曲を連発している。アイドルっぽいルックスもあって、若手声優では屈指の売れっ子だ。そんな戸松さんのライブ、それも1か月にわたるツアーの最終日とあって、5000人収容のホールには多くのファンが詰めかけていた。
事故が起きたのは、開演から約1時間、会場の熱狂が1つの山場を迎えようとしていたときだった。戸松さんのハイテンションな歌声にあわせ、ファンは絶叫し、あるいはその場で激しくジャンプし、ほとんど地震のように会場は揺れていたという。
ところがそのとき、2階バルコニー部分に据えつけられていた舞台照明の1つを固定していた金具が、突然壊れた。重さを支えきれなくなったその照明は、そのままおよそ9メートル下の1階観客席めがけて落下した。
東京国際フォーラムによれば、この照明は幅471ミリ・高さ298ミリ・長さ859ミリで、重さは18.5キロに達した。しかも照明は1階会場のちょうど中央、25列目の観客席の真上に設置されていた。もしそこに人が座っていれば、間違いなく「直撃」だっただろう。
「生きてるのが奇跡だな」
不幸中の幸いだったのは、ライブの盛り上がりのため、観客のほとんどが立ち上がってステージを見ていたことだった。落下した照明が落ちたのは、ちょうど無人の座席だった。とはいえ、直撃こそ避けたものの照明は客席にバウンドし、近くにいた観客の1人に激突した。
すぐにスタッフなどが駆けつけ、あたりは騒然とした雰囲気に。居合わせた人のツイッターによれば、スタッフからは「生きてるのが奇跡だな」というつぶやきも漏れたという。この観客は肩と頭を打撲していたものの幸いケガは軽く、搬送された病院からもその日のうちに帰宅できたそうだ。
東京国際フォーラムの担当者は、沈痛な声でこう話す。
「こうした事故は想定していなかった。問題の照明についても、現在のところこれといった落下の兆候があったという情報はありません。現在、詳しい原因を調査中です」
また照明付近の席にいた観客からは、他の照明が同様に落下する可能性を考えて、ライブを中断させてでも別の席に避難させてほしかった、との不満も。これについても担当者は、ケガ人の救護に追われるあまり、そこまで手が回らなかったことを認めた。
会場ではライブ終了後、照明の安全確認を行うとともに、落下防止用のワイヤーを新たに複数かけ、万が一再び金具が外れても落下することがないよう処置を行ったという。そのため翌11日以降は、アイドル「ももいろクローバーZ」のライブが行われるなど、通常通りの営業を行っている。
なお戸松さんは12日夕時点で、今回の事故については触れていない。