小児の救急患者を減らす目的で、厚生労働省が2004年から全国に展開している小児救急電話相談事業 (シャープ8000番) の内容がまだ不十分であることが、2013年1月26日、東京で開かれた第9回日本小児医療政策研究会で明らかになった。この事業の先駆者でもある桑原正彦・広島県小児科医会会長が「意義と現状」を報告した。
「すぐに119番を」はごくわずか
事業は47都道府県に広がってはいるが、問題がいくつもあることを、桑原さんは地元広島県を例に報告した。本来は24時間対応すべきだが、多くは23時まで。それ以降も受けているのは20都道府県程度で、しかもその半数以上が東京の民間会社に委託している。
2005年から2010年まで、広島県では29566件の相談を受け付けた。相談を受けた看護師が「すぐに119番を」と答えたのは41件でわずか0.13%。約1000件に1件で、「病院へ行くように勧めた」のが5046件で17.1%だった。
「明日になっても心配なら」が36.4%。看護師が控えの医師に相談してから答えたのは311件、1.1%。全体としては心配のないケースが圧倒的だった。また、子どもの症状が出た半数は当日だった。
広島県を含む多くの県は回線が少ないために「話し中」が多い。広島県では1人の相談中に6~7人が「話し中」ということで諦めていた。
桑原さんによると、小児の救急体制の充実には、家庭でできる救急ガイドブック、次に電話相談、さらに実際の救急医療機関という道筋を整備することが理想的。それには家庭の看護力が第一で、続いて学校での保健・健康教育の充実、身近な診療所を対象に小児救急医療講習をするなどの政策が必要とした。また、緊急の課題として、ろうあ者や外国人家族向けの相談、電話相談員の質の向上、さらにはバックアップ機関として「全国情報支援センター」の設置、などを訴えた。
(医療ジャーナリスト 田辺功)