2013年10月に運行を開始するJR九州の富裕層向け寝台列車「ななつ星」が海外で大注目されている。
当初からアジアを中心とした販売を見込んでいたが、欧州や中東からも問い合わせがきている。
JR九州では、14年4月以降の運行分からの販売を目指し、旅行会社や仲介業者との交渉を進めていく。
日本版の「オリエントエクスプレス」ともいえる
「ななつ星」は日本初の「クルーズトレイン」というコンセプトの、富裕層向け豪華寝台列車。1泊2日または2泊3日で、福岡・博多から大分・由布院などの九州の観光地を周遊する。7両編成で、ラウンジカーにはピアノとバーカウンターを備え、客室はすべてゆったりとしたスイートとなっている。いわば「日本版オリエントエクスプレス」だ。
日本にはあまりなじみのない「豪華寝台列車」というコンセプトと、九州自体が日本旅行で訪れる先として目新しいことがあって、海外の目を引いているようだ。
JR九州によると、すでに販売を締め切った第一期(13年10月~12月運行分)について、海外から数件個人での応募があった。さらに、アジアやヨーロッパ、中東の海外の旅行会社も関心を寄せているという。
同社では12年6月に中国・上海でおこなわれた富裕層向けの旅行会社との商談会に参加。3日間で、参加した計200の旅行会社のうち、60社との商談をおこなった。香港、台湾、韓国などの会社で、その半数は相手方が希望したものだった。
また、同年12月にはフランス・カンヌで開かれた同様のイベントでは、40数社と話をした。反応は「非常に良かった」。ヨーロッパにはすでにオリエントエクスプレスのような「豪華列車」の文化があったため、より早く理解を得られたという。
とりわけ、フランスとアラブ首長国連邦(UAE)の旅行会社はイベント前からすでに「ななつ星」の存在を知っていて、「打ち合わせを楽しみにしていた」と言われた。これには、「(海外にはあまりPRしてこなかったので)びっくりしました」と明かす。
1室2名で計110万円
「ななつ星」には当初から九州を世界にPRする目的があり、客の半数がアジアを中心とした外国人客となる青写真を描いていた。ただ、ヨーロッパでの好感触は予想以上だったようだ。今後は積極的に取り組んでいきたいという。
14年4月運行分から海外での販売を開始したい考えで、13年4月にアジア圏では各国の旅行会社それぞれ1~2社と直接、ヨーロッパ地域については複数国のとりまとめをおこなうランドオペレーターとの契約をおこなう。
外国人客の受け入れが本格化すれば、車内では日本語と英語をともに「公用語」とし、中国と韓国語の話せるスタッフもおく予定だ。
「ななつ星」は国内でも非常に人気が高く、1室2名で計110万円という価格帯ながら、日本では第1期(10月~12月)運行分を12年10月1日に発売すると、定員の平均7・27倍にあたる814件の応募がきた。また、第2期(14年1月~3月運行分)についても、13年1月4日の募集開始から半月で倍率が3倍に達している。