国連で「水俣条約」に合意 2020年以降、水銀製品の製造や輸出入を原則禁止

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途上国の健康被害を助長

   強力な規制を求めてきたNGOなどが批判するのが人力小規模金採掘問題だ。金を含む鉱石を砕き、水銀と混ぜ合わせて合金を作り、加熱して水銀を蒸発させることで金のみを取り出す方法で、安価で容易なため途上国各地で広く行われているが、労働者は高濃度の水銀蒸気にさらされ、頭痛やめまい、呼吸困難などの健康被害が出る危険性が高い。

   しかし、条約は一律禁止ではなく、該当国が水銀使用廃絶に向けて行動計画をつくるとした。水銀を使わない代替法はコストがかかるため、途上国は規制強化に抵抗、努力義務にとどまったのだ。

   「金採掘は貧しい地域の収入源となっており、貧困問題を解決しなければ、水銀問題も解決しない」(NGO)というが、その具体的方策は、今後の議論に先送りされた。

   日本にとって課題となるのが、水銀禁輸への対応だ。日本は水俣病の教訓もあって、脱水銀技術では先進的。水銀を使わない電池などで世界をリードし、水銀を使う蛍光灯からLEDへの切り替えも、省エネの要請もあって急速に進んでいる。国内の使用量はピークの1964年の年間約2500トンから、現在は10トン程度に減らした。

   しかし、その分、水銀が慢性的に余るようになっている。国内では血圧計や電池、金属製錬の工程で出る汚泥などから年間90トンを回収しており、備蓄分も含め年間約100トンの水銀を輸出している。これらは歯科材料から採掘用に転用されるなど、結果的に途上国の健康被害を助長していると指摘される。

   そこで、国内で保管することが必要になる。ただ、安全に保管するのは簡単ではない。放射性廃棄物ほどではないが、自然災害の多い日本で、しかも永久に、保管するほうほうは、まだ確立していない。専門家は、液体のままよりも硫化水銀に固体化して保管するのが、安定して望ましいと指摘される。費用も、民間ビジネスにはなじまず、国の責任でするほかなさそうだが、「迷惑施設」として場所の選定も困難が予想される。こうした課題をどう乗り越えるか、政府の国際的にも国内的にも、重い責任を課せられた。

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