インターネット販売大手のアマゾンと楽天がそろって、国内の電子書籍市場に参入を果たした2012年。アマゾン「Kindle」と楽天「kobo Touch」などのリーダー端末とともに、「本」を販売する電子書籍ストアの利用者の獲得競争が激しくなっている。
出版・メディア調査などのインプレスR&Dによると、電子書籍ストアの利用率でアマゾンの「Kindleストア」を利用している人は40.0%で、楽天の「koboイーブックストア」を大きく引き離している。
「Kindleストア」2か月足らずで首位に
インプレスR&Dの「電子書籍ストアの利用率に関する調査」は、電子出版産業の関係者向け専門誌「OnDeck weekly」の読者を対象に、12年12月に行われた(有効回答数582件)。
それによると、「現在利用している」電子書籍ストアで、最も多かったのは「Kindleストア」で40.0%だった。次いで「紀伊國屋書店BookWebPlus」(アップルのiPadやソニーのReaderなどに対応)の13.4%、ソニーが運営する「Reader Store」が10.1%、「楽天kobo」の7.4%、「BookLive!」の6.7%と続いている。
「Kindleストア」の日本での開設は、12年10月25日。2か月足らずで首位に立ち、それまでトップを守っていた「紀伊國屋書店 BookWebPlus」を大きく上回った。短期間で多くの利用者を獲得したことになる。
「Kindleストア」を「過去に購入したことがある」「試した程度」という人を含めると、67.2%が「1度は利用したことがある」わけで、出版関係者らのデータとはいえ、「Kindle」への関心の高さがうかがえる。
この調査結果について、インプレスR&Dは次のように分析している。
注目すべきは、2位以下の電子書籍ストアの利用率に大きな変動がなかったことで、「紀伊國屋書店 BookWebPlus」「Reader Store」「BookLive!」はそれぞれ利用率が上がっている。「Kindleストア」の参入が、「既存のブックストアのシェアを浸食せずに新たな市場をつくり上げたことになる」としている。
一方、楽天の「koboイーブックストア」が前回調査時(8.5%)から1.1ポイント減の7.4%となったのは、「電子ペーパー型の専用端末であること、iPhoneやiPad、Androidといった端末向けアプリケーションへの対応が遅れたことなどが影響したと思われる」とみている。
出足で躓いた「楽天kobo」
それにしても、楽天の「koboイーブックストア」が「紀伊國屋書店 BookWebPlus」や「Reader Store」にも及ばないというのは意外だ。
楽天koboは7000円台という、それまでのリーダー端末と比べると安価で、それによって電子書籍で「本」を読む人はやや広がったとされる。PRにも熱心で、話題性もあった。
半面、急拡大と過剰なPRがかえって災いし、初心者に配慮したマニュアルがなく不親切とされたことや、3万冊としていたコンテンツがなかなか出揃わないことなど、出足での躓きが評価を下げた。
「Kindleストア」にしても、楽天koboをはじめ国内の電子書籍ストアよりも日本語コンテンツ数で必ずしも圧倒しているわけではない。なにしろ、日本にオープンしてまだ3か月なのだ。おそらく、現段階の「差」は運営する「アマゾン」の知名度と米国などでの実績、これまで本などのネット販売で培ってきた信頼度なのだろう。