2013年の春闘が幕を開けた。「アベノミクス」効果で株価が上昇し、企業業績も明るい兆しが見えてきた。「下がり続ける給料がようやく上がる」――。そんな期待が膨らむが、そう簡単ではなさそうだ。
「依然として経営環境は厳しい。雇用の維持、安定が最優先」と主張する経営側に対し、労働者側は政府が掲げるデフレ脱却には「賃金アップによる個人消費の活性化が必要だ」と、定期昇給(定昇)を維持したうえで給与総額を1%引き上げるよう求めた。
「給料が上がらないから、消費が増えない」
事実上の春闘交渉がはじまった2013年1月29日、日本経団連の米倉弘昌会長と連合の古賀伸明会長がいきなり、ぶつかった。
経営側は「自社の存続と発展、雇用の維持・安定を確かなものにするために危機感を正しく共有すべき」と主張。さらに、危機的な経営状況にある企業は「定昇の凍結、延期を協議することも必要だ」と、厳しく迫った。
対する労働者側は「人件費の削減だけではデフレから抜け出せない。将来に向けた人材投資に経営の舵を切ることだ」と、賃上げの必要性を強調した。
たしかに、足もとの経済状況はだいぶ明るいムードが漂ってきた。それでも大手電機メーカーなどの大規模リストラのようすなどをみると、「当分、給料は上がらないな」と落胆するビジネスパーソンは少なくないだろう。
では、いったい給料はいつになれば上がるのだろうか――。
安倍政権の産業競争力会議のメンバーで、小泉政権時に経済財政相を務めた竹中平蔵・慶大教授はTBSの情報番組「朝ズバ!」(1月10日放送)で、こう指摘した。
「経済全体がよくならないと…。時間かかることを覚悟してほしい。半年や1年で給料が上がるという簡単なものではないのです。うまくいっても、3年ぐらい見ておかなくてはいけない」
ジャンボジェット機にたとえ、日本の経済全体という「前輪」が上がらなければ、ビジネスパーソンの給料アップや中小企業が潤うといった「後輪」の部分は上がらない、というのだ。
「人手不足」にならないと給料は上がらない?
厚生労働省が2013年1月31日に発表した毎月勤労統計調査(速報、従業員5人以上)によると、2012年の従業員1人あたり月平均の現金給与総額は前年比0.6%減の31万4236円で、2年連続で前年を下回った。それも、比較可能な1990年以降の最低を更新したという。
前年比3.1%減少したボーナスは3年ぶりのマイナスだが、基本給や家族手当などを含む所定内給与は0.1%減とわずかとはいえ、じつに7年も連続で減っているのだ。
そうした中で思わず、「3年も待つか」とつぶやいたビジネスパーソンもいるだろう。
経済ジャーナリストの荻原博子氏はJ‐CASTニュースの取材に、「(竹中氏のいう)3年というのは雰囲気にすぎない」と断じた。「イメージとしては、政府の成長戦略に乗って景気がよくなり、企業の雇用も進むし給料も上がる、というのでしょうが、まだ具体的な成長戦略も示されていないうちに、3年といわれても・・・」と、懐疑的にみている。
「いま、東北では大工さんが不足していて、日当が上がっています。つまり、給料が上がる段階というのは企業が忙しくなって人手不足に陥るときなんです。100人の募集に90人しか集まらない。そうなれば、給料を上げざるを得なくなります」(荻原氏)
そんなときが、これからの3年で起こるのだろうか――。