政府は2013年の訪日外国人旅行者数について「1000万人を目指す」との目標を掲げた。2011年の東日本大震災と東京電力福島第1原発事故の影響で訪日外国人は一時激減したが、2012年はほぼ回復。2013年については「回復から飛躍へ」(観光庁)とかけ声を上げる。
ただ、尖閣諸島を巡る日中間の対立で、頼みとする中国人の動向は依然厳しく、1000万人の目標達成には課題が多い。
震災前の水準にほぼ回復
日本政府観光局が1月発表した2012年の訪日外国人数(推計値)は、前年比34.6%増の836万8100人。過去最高だった2010年(861万人)に次ぐ歴代2番目の高水準となった。大震災や原発事故の影響が薄らいできたことに加え、格安航空会社(LCC)の相次ぐ就航で航空運賃が低下したことや、日本政府による個人観光査証(ビザ)の発給要件の緩和などが後押ししたといえる。
「2012年は震災前の水準にほぼ回復した」(観光庁)とし、さらに訪日客を増やそうというのが2013年の政府の方針だ。国土交通省ではさっそく1月29日、太田昭宏国交相を本部長とする「観光立国推進本部」を立ち上げた。関係省庁と連携を取りながら、訪日観光客の誘致などに向けた国家ぐるみの取り組みを強化する方針だ。
中国からの訪日客数は低調なまま
一方、観光庁は2月に入り、イスラム教徒の受け入れ体制を整備するためのセミナーを開催するなど、イスラム教徒の対応に力を入れ始めている。今年は日・ASEAN(東南アジア諸国連合)友好協力40周年という記念の年を迎える。この機会をとらえ、イスラム教徒が多く、人口が大きいマレーシアやインドネシアなどから旅行者を取り込もうとの構えだ。
ただ、1000万人の目標を達成するには、さまざまな問題がたちはだかる。まず中国人の動向だ。12年夏以降、尖閣問題で日中関係は悪化しており、中国からの訪日客数は低調なままだ。直近の12年12月の中国人訪日客数は前年同期比34.2%減の5万2400人。国・地域別の訪日数では例年、中国人は韓国人に次いで2番目に大きいが、2012年の年間訪日数は143万人にとどまり、台湾(146万6700人)を下回った。最近では中国海軍の艦船が日本の海上自衛隊の護衛艦などに火器管制レーダーを照射したという深刻な事態が生じており、日中間の緊張関係の高まりは訪日数のさらなる減少につながりかねない。
また、最大の顧客である韓国人の動向も見通せない。韓国では他国に比べて原発事故に対する風評被害が大きい。2012年秋以降から徐々に持ち直しているとはいえ、まだ震災前のレベルまで回復しておらず、懸念材料は少なくないのが現状だ。